サッカーの話をしよう
No.126 レベル維持のために入れ替え戦制度を
再来年のJリーグ参加クラブをどうするか、混乱した議論が続いている。混乱の原因は、「入れ替えシステムの導入」と、「Jリーグの適切なクラブ数」という、本来まったく異質なものをいっしょくたに議論していることにある。
Jリーグ理事会は、16クラブになった後はJFL上位2クラブとの間で入れ替えを行うことを昨年末に決定した。だが、ことし10月の実行委員会では、これを白紙に戻して検討する方向で話がまとまった。
「JFLに落ちたら収入が落ち、クラブ経営が破綻する」というのが、各クラブからの代表で構成される実行委員会の多数意見だったと伝えられている。
リーグの入れ替えシステムは2種類ある。「自動入れ替え」と「入れ替え戦」だ。世界の大多数の国のリーグでは自動入れ替えだ。入れ替え戦は通常引き分けなら残留なので、昇格を目指す側にとっては苦しい。Jリーグ理事会の決定は、最下位は自動降格、15位クラブがJFL2位と入れ替え戦という案だった。
こうした入れ替えシステムの存在は、リーグの「権威」を守るうえでも欠くことができない。入れ替えを実施することにより、常に頂点のリーグであることが保証されるからだ。
発足して3年目のJリーグの場合、これまでは参加条件をクリアし準会員として認められたうえで、JFLで2位までにはいったら昇格させる方式をとってきた。10クラブからスタートし、4季目の来年は16クラブのリーグとなる。いつまでも増やすわけにはいかないから、理事会は「16クラブになったら入れ替えを行う」と決めたのだ。
これに対する実行委員会の考えには、あきれかえってものも言えない。入場券を売る努力もせず、契約プロ選手やスタッフの数、選手の年俸など、切り詰める余地が十分すぎるほどあるものに手をつけず、「経営努力」せずに「落ちたらつぶれるから入れ替えは行わない」などという話を、誰が納得できるというのか。
現在Jリーグの王者は実質上「日本チャンピオン」と認められている。アジアクラブ選手権への出場権を与えられていることでわかるだろう。だがそれは「昇格制度」あるいは「入れ替え制度」によって、強いチームだけがJリーグで戦っていることが保証されているからにほかならない。
ただし、入れ替えを行うに当たっては、チームの成績が順位にきちんと反映されるものに勝ち点制度を変更しなければならない。
だが来年度に入れ替えを行うかどうかは、まったく別の次元の話だ。これは、日本サッカーの全体の構造のなかで、Jリーグは何クラブで実施するのが適当かの判断によるからだ。
クラブを支えるホームタウン環境(観客動員とスタジアム)。トップクラスの選手と審判の人数。リーグと日本代表の日程の両立。マスメディアとの調整。多くの要素がからむ。
すべてを考慮に入れたうえで16が適当という判断なら、来年度から入れ替えを行わなければならない。だが18のほうがいいという結論であれば、入れ替えの実施は早くても再来年ということになる。
個人的な意見では、マスメディアとの調整以外、18クラブにしても十分やっていけるはずだ。「1日に9試合では、全試合をカバーし報道するのが困難になる」というのがマスメディアの意見だが、対処の方法はいくらでもある。
遅かれ早かれ入れ替えは実施しなくてはならない。いま必要なのは、日本のトップリーグの適切なクラブ数が16なのか18なのかの議論であるはずだ。
(1995年11月21日)
Jリーグ理事会は、16クラブになった後はJFL上位2クラブとの間で入れ替えを行うことを昨年末に決定した。だが、ことし10月の実行委員会では、これを白紙に戻して検討する方向で話がまとまった。
「JFLに落ちたら収入が落ち、クラブ経営が破綻する」というのが、各クラブからの代表で構成される実行委員会の多数意見だったと伝えられている。
リーグの入れ替えシステムは2種類ある。「自動入れ替え」と「入れ替え戦」だ。世界の大多数の国のリーグでは自動入れ替えだ。入れ替え戦は通常引き分けなら残留なので、昇格を目指す側にとっては苦しい。Jリーグ理事会の決定は、最下位は自動降格、15位クラブがJFL2位と入れ替え戦という案だった。
こうした入れ替えシステムの存在は、リーグの「権威」を守るうえでも欠くことができない。入れ替えを実施することにより、常に頂点のリーグであることが保証されるからだ。
発足して3年目のJリーグの場合、これまでは参加条件をクリアし準会員として認められたうえで、JFLで2位までにはいったら昇格させる方式をとってきた。10クラブからスタートし、4季目の来年は16クラブのリーグとなる。いつまでも増やすわけにはいかないから、理事会は「16クラブになったら入れ替えを行う」と決めたのだ。
これに対する実行委員会の考えには、あきれかえってものも言えない。入場券を売る努力もせず、契約プロ選手やスタッフの数、選手の年俸など、切り詰める余地が十分すぎるほどあるものに手をつけず、「経営努力」せずに「落ちたらつぶれるから入れ替えは行わない」などという話を、誰が納得できるというのか。
現在Jリーグの王者は実質上「日本チャンピオン」と認められている。アジアクラブ選手権への出場権を与えられていることでわかるだろう。だがそれは「昇格制度」あるいは「入れ替え制度」によって、強いチームだけがJリーグで戦っていることが保証されているからにほかならない。
ただし、入れ替えを行うに当たっては、チームの成績が順位にきちんと反映されるものに勝ち点制度を変更しなければならない。
だが来年度に入れ替えを行うかどうかは、まったく別の次元の話だ。これは、日本サッカーの全体の構造のなかで、Jリーグは何クラブで実施するのが適当かの判断によるからだ。
クラブを支えるホームタウン環境(観客動員とスタジアム)。トップクラスの選手と審判の人数。リーグと日本代表の日程の両立。マスメディアとの調整。多くの要素がからむ。
すべてを考慮に入れたうえで16が適当という判断なら、来年度から入れ替えを行わなければならない。だが18のほうがいいという結論であれば、入れ替えの実施は早くても再来年ということになる。
個人的な意見では、マスメディアとの調整以外、18クラブにしても十分やっていけるはずだ。「1日に9試合では、全試合をカバーし報道するのが困難になる」というのがマスメディアの意見だが、対処の方法はいくらでもある。
遅かれ早かれ入れ替えは実施しなくてはならない。いま必要なのは、日本のトップリーグの適切なクラブ数が16なのか18なのかの議論であるはずだ。
(1995年11月21日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。