サッカーの話をしよう

No.163 移籍推進がJリーグの将来のカギ

 Jリーグの後期がスタートし、優勝の行方など見当もつかない時期に、早くも来年のリーグ戦方式が話題に上り始めている。

 先月末に報道された試案では、最多で2クラブが昇格し、18クラブ制になる予定の来季は、今季と同様に年間で2回総当たり(1クラブあたり34試合)とする。そして前・後期でそれぞれ優勝を決め、年間王者をかけて「チャンピオンシップ」を開催する。
 この試案に対し、Jリーグの「業務運営委員会」では「試合が少なすぎる」などの反対意見が出ているという。理由は、主としてクラブ経営の立場、すなわち入場料収入確保だ。
 だがより大きな問題は、18クラブ制がファンの興味を引きつけられるかということではないか。

 今季昇格の京都サンガは18節終了時点で全敗、勝ち点は0のままだ。何よりも日本人選手が力不足だ。シーズン途中にラモス瑠偉(ヴェルディ川崎)、山口敏弘(ガンバ大阪)という実力派を獲得したが、監督交代もあり、まだ「結果」にはつながっていない。
 当初から「急激にクラブ数を増やすと、リーグのレベル低下を招く」という意見があった。昨季までの昇格クラブはそれぞれがんばったが、「16クラブ目」のサンガが、この懸念を実証してしまった。今後昇格するクラブが二の舞にならないとは言い切れない。
 「チームレベル格差の拡大」は、観客動員に直接影響する。戦う前から結果が明白な試合がいくつもあったら、リーグの興味は急激に失せてしまう。
 では、やはり「18クラブ」は無理なのか。私はそうは思わない。だが、そのためには「リーグの構造改革」が必要だ。

 ひとつのクラブの「トップチーム枠」が20人、そのうち平均4人が外国人選手とすると、日本人は16人、18クラブでも288人いれば足りることになる。ところが今季のはじめには、一クラブ平均30人、16クラブ総計では480人余りの日本人選手が登録されていた。
 多くの選手をかかえているのは、各クラブの直接的指導の下、「サテライトリーグ」で次代の選手を育成しようという考えだ。日本サッカー協会が規定している「移籍規定」がネックとなり、クラブ自体にも移籍が積極的にとらえられていないこともあって、自前で選手をまかなわなければならない状況だからだ。

 Jリーグはサテライトリーグのあり方を再考し、少なくともアマチュアだけのリーグにするべきだ。それは、日本協会の移籍規定改正に基づく移籍の活性化とセットにならなければならない。各クラブのプロ選手数を減らすことが、現在のJリーグが直面する問題の解決の決め手となる。
 これによって、昇格するクラブはいい選手をそろえることができ、シーズン中に負傷などで選手が足りなくなっても移籍で補うことが可能になる。18クラブでも十分トッププロらしいレベルを保持できる。
 カズや前園といったトップクラスの移籍が実現すれば、毎年各クラブはフレッシュで魅力的な布陣でシーズンインができる。それはシーズンチケットの売り上げを促進する一方、クラブ間の力のバランスを絶えず変えて、より興味深いリーグにするはずだ。

 選手数が多いから、試合数を増やさなければならない。試合数が多いから、ケガも多く、選手数を増やさなければならない。悪循環に陥っているJリーグを救うのは、移籍の活発化を伴う「リーグ構造改革」以外にない。日程のやり繰りではもうどうしようもないところにきているのだ。

(1996年9月9日)
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