サッカーの話をしよう

No.314 「会長公選制」の導入を

 ここ3週間、日本中が代表監督問題に振り回された。会長、副会長、理事会などの名称がたびたび登場した。しかし誰が権限と責任をもつのか、非常にわかりにくかった。
 原因は、「財団法人日本サッカー協会」という組織のわかりにくさにある。そもそも日本協会の会長はどんなプロセスで選ばれ、任期は何年なのか。
 実は、今月は日本協会の「役員改選」の月に当たる。任期は2年。98年に改選された役員が任期満了を迎え、5月27日には「新しいサッカー協会」が生まれることになる。

 日本協会の「役員」とは、会長、副会長などの3役を含む最多27人までの「理事」と、2人ないし3人の「監事」。当然、理事のひとりである岡野会長もその「第1期」を終える。監督問題で会長の歯切れが悪かったのは、任期切れを考慮してのものだったかもしれない。
 財団法人日本サッカー協会の「寄附行為」(株式会社の定款に当たる)と「基本規定」に、役員選任の定めがある。
 日本協会は全国47の「都道府県協会」のメンバーシップでつくられている。メンバーはそれぞれ1人ずつの代表者(評議員)を出し、全国評議員会で日本協会の役員を選任する。
 そして、会長、副会長、専務理事の「3役」は、評議員会によって選任された理事会の「互選」により決められる。会長も副会長も、まずは理事として選ばれ、理事会のなかで推挙されるという形をとるわけだ。
 それは一見、民主的な組織のように見える。全国のチームはいずれかの都道府県協会に所属している。その代表者が理事を選ぶのだから、理にかなう。

 だが実際には、評議員が勝手に名前を挙げたり、オープンな選挙をしているわけではない。改選前の理事会が新理事会の候補者名簿を作成し、評議員会はそれを承認するという形が取られている。現状では評議員会は形式にすぎない。日本協会の「役員改選」は、「選挙」というよりむしろ「人事」といってよい。
 以前は数人の幹部で新理事候補の名簿を作成していたが、前回から数人の評議員を含む「推薦委員会」で検討することにした。旧理事会のメンバーがそれぞれ自由に20人の名前を挙げ、それを集計した結果をもとにこの委員会が候補者を検討してまとめ、理事会に提出して承認を受けるのだ。以前に比べればオープンな形だが、そこにあるのは依然として少数の人びとによる「人事」の意識だ。多くの人の意見を集約する「民主主義」の意識は希薄だ。
 こうして選ばれる理事会であり、会長、副会長だから、何十年も継続して安定した形でやってくることができたのだろう。

 しかし日本協会はいまや5万のチーム、100万の選手をかかえ、70億円の予算規模の団体となった。代表監督問題は大新聞の1面を飾る「社会問題」だ。10年前とは比較にならないほど上がった「社会的地位」に、こうした「役員人事」はふさわしいとは思えない。私は「会長公選制」の導入を提案したい。
 会長候補が自分の理事候補の名簿とともに立候補を表明する。そして各都道府県協会のなかでどの候補グループを支持するかの「投票」を行う。多くの都道府県協会の支持を取り付けたグループが当選となる。任期は現在の倍の4年間とする。
 アメリカ大統領選挙のようなイメージだが、こうした手続きによって会長の政策が明瞭になり、全国のメンバーは「自分たちのサッカー協会」という意識をもつことができるはずだ。
  日本代表の監督問題は、日本協会の組織がいかに不透明で、「権限と責任のありか」がいかにあいまいであるかを露見させた。そろそろ「会長公選制」を考える時期ではないだろうか。

(2000年5月17日)
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