サッカーの話をしよう
No.326 「4人目の交代」検討を
「ベンチにはいるサブの選手数を増やし、延長にはいったときには、4人目の交代を許すべきだ」
鹿島アントラーズのトニーニョ・セレーゾ監督は、こう主張し続けている。今シーズンの開幕戦で試合後そう話し、先週、8月5日の横浜F・マリノス戦後にも、同じことを話した。今回は、セレーゾ監督の意見について考えてみたい。
現在のJリーグの選手交代は、試合前に5人のベンチ入り選手を登録しておき、試合中にいつでもそのうち3人まで交代させることができるというシステムになっている。
選手交代が3人になったのは、そう古いことではない。94年の国際ルール改正で「2+1」という制度が採用された。GKに限って、3人目の交代が許されるという中途半端なもので、翌年すぐポジションに関係なく3人の交代が認められた。
すなわち、Jリーグがスタートした93年には、まだ2人しか交代が許されていなかったのだ。ベンチ入りする交代選手枠が5人というのも、当時のルールに従って決められたものであり、各スタジアムでは、役員6人と交代選手5人、計11人が座ることのできるベンチが用意された。
まさか、そのベンチの収容人員を増やすことができないからベンチ入り選手枠を増やさないのではないと思うが、交代できる人数が2人から3人になってもベンチ入り選手枠が増えないのは解せない。
交代が3人になった95年のルールでは、公式戦において「登録できる交代要員」を「3人から最大5人まで」と従来のままだったが、96年のルール改正で最大人数を「7人」に増やした。イタリアのセリエAでは、その制限いっぱいの7人の選手がベンチにはいっている。
試合の状況次第では、「サブにあのポジションの選手を入れておけばよかったな」と思うときがよくある。交代で出せる選手の選択肢を増やし、試合をよりきめ細かなものにするためにも、ベンチ入りする交代選手の枠を7人に増やすべきだと思う。
セレーゾ監督の意見は、ここまではルールの範囲内にある。問題は「4人目の交代」だ。ルールでは、「公式戦では...最大3人までの交代」と規定されているからだ。
しかし、Jリーグの延長戦というのは、93年にスタートしたときに、国際サッカー連盟(FIFA)からテストケースとして認められ、そのままずるずると今日に至っているものだ。リーグ戦で延長戦を行うことこそ、「ルール外」のことなのだ。
そのJリーグで、延長にはいったときに限って4人目の交代を認めるというのは、非常に合理的だと思う。
これなら、90分間の戦いは、他の国と同じになる。選手交代に関しては、監督は90分間の勝負だけを考えて手を打つことができるからだ。
たとえば、同点のまま残り10分を切り、攻勢に試合を進めているとき、「ここでFWを出して勝負に出たい」と思っても、それが3人目の交代だったら、延長になったときに苦しくなるとう心配が、監督たちに「勝負」に出る交代をためらわせている。Jリーグの試合終盤の戦いに迫力が生まれないのは、それも影響しているはずだ。しかし延長になったら4人目の交代が使えるということであれば、その前に勝負に出ることができる。
なんども書いてきたが、私はリーグ戦で延長戦を行う現在のJリーグの試合方式には賛成ではない。しかし現状で延長戦を廃止できないというのなら、「4人目の交代」を早急に検討するべきだと思う。
セレーゾ監督の意見を他クラブの監督がどう考えるか、ぜひとも聞いてみたい気がする。
(2000年8月9日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。