サッカーの話をしよう

No.383 「新しいアフリカ」セネガル

 現在、日本代表はヨーロッパに遠征している。4日(木曜日)にフランスのランス(Lens)でセネガルと対戦し、7日(日曜日)には、イギリスに渡ってサウサンプトンでナイジェリアと対戦する。
 日本代表のことしのテーマのひとつが「世界の強豪とのアウェーでの対戦」だった。フランスもイギリスも、たしかに「ホーム」ではないが、かといって「相手国」でもない。最初の対戦相手であるセネガルを材料に、すこし考えてみたい。
 セネガルは、7月に終了した2002年ワールドカップのアフリカ予選でモロッコ、エジプトという強豪国を退け、初めて出場権を獲得した。
 7月14日、首都ダカールにモロッコを迎えたとき、モロッコは余裕たっぷりだった。引き分けさえすれば、連続出場が決まるからだ。

 しかし6万人のホームの観客の前で、セネガルは勇敢な戦いを見せた。前半17分、エースのエルハジ・ディウフが決勝ゴールを決め、1−0で勝利。モロッコは勝ち点15、得失点差+5で全日程を終えた。
 セネガルが最終戦でナミビアに勝てば、モロッコに勝ち点で並び、得失点差で上回ることになる。しかしライバルはモロッコだけではなかった。エジプトも、セネガルと同勝ち点でアルジェリア戦を残していたのだ。
 7月21日セネガルはナミビアの首都ウィントフークに遠征し、5−0の快勝。一方のエジプトは、アルジェリアと1−1で引き分けた。アフリカ大陸の南北に7000キロも離れたふたつの試合の結果は、セネガルにワールドカップ初出場をもたらした。ダカールでテレビに見入っていたファンは通りに飛び出し、町を挙げ、夜を徹してのお祭りになったという。

 セネガルはアフリカ大陸の西端に位置し、ヨーロッパとアメリカ大陸を結ぶ航路のちょうど中間にあたるため、18世紀から列強が争奪戦を続けた。そして19世紀半ばにフランスの支配権が確立し、1960年に独立を達成するまで植民地の時代が続いた。公用語はフランス語である。
 サッカーはフランス人の手で導入された。最初はフランス人だけのものだったが、次第に地元の人々も参加し、第二次大戦後には「フランス領西アフリカ・リーグ」も誕生した。独立後すぐにサッカー協会がつくられ、62年に国際サッカー連盟(FIFA)に加盟した。
 しかしワールドカップ初出場までに40年を要した。トップクラスの選手はフランスで活躍していたが、金銭的な条件が合わず、そうしたプロ選手たちをフルに召集することができなかったのだ。2年にいちどのアフリカ・ネーションズ・カップを含め、予選は地元の選手を中心に戦うのが常だった。

 しかし今回のワールドカップ予選は別だった。フランス人のブルーノ・メツ監督の下、ヨーロッパで活躍するプロ選手たちが集結、固いチームワークで戦いぬいたのだ。
 ヨーロッパといっても、その大半がフランスのクラブである。そして、予選で8得点を挙げた21歳のエース、エルハジ・ディウフ、左バックのフェルディナン・コリー、守備的MFのエルハジ・サール、FWのラミン・サコーの4人は、まさに、日本戦が行われるランス・クラブの所属選手なのだ。
 フランス中から、セネガル系の人々が駆けつけるだろう。その雰囲気は、完全に「アウェー」のものとなるはずだ。
 アフリカ最終予選8試合で失点わずか2という守備の固さと、「ホーム」のファンの声援にあと押しされる攻撃。この強豪に、日本がどんな戦いを見せるか、本当に楽しみだ。

(2001年10月3日)
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