サッカーの話をしよう

No.404 ことしのルール改正

 国際サッカー評議会(IFAB)の年次会議が先週の土曜日にスイスのツェルマットで開催された。
 サッカーのルールを検討し、決めるのは、国際サッカー連盟(FIFA)ではない。イギリスの4協会(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)と、FIFAの5者で構成されるIFABに、すべての決定権が委ねられている。といっても、常時開催されている会議ではなく、年にいちど、通常2月か3月に1日行われるだけだ。
 ことしの会議では、大きなルール改正は決議されなかった。FKの際に相手がすみやかに9.15メートル離れなかったときに、さらに9.15メートルの前進を認めるという新ルール案は、イングランド・サッカー協会の実験で好結果を得たことが報告されたが、ワールドカップでいきなりこのルールを適用するのは無理があると、もう1年間の実験が決められた。しかし遅くとも2004年には、このルールが適用されることになるだろう。

 今回の最大の話題は、反則されたことを装ってレフェリーを欺こうという行為(シミュレーション)に対して、レフェリーが厳しい態度をとるべきというFIFAの見解を、IFABも認めたことだった。同時に、反則を受けたときにレフェリーにイエローカードやレッドカードを出すよう求める行為に対しても、シミュレーションと同じようにレフェリーが厳然と対処するよう求めることになった。
 今週、ワールドカップに出場する全レフェリーを集めたセミナーが、韓国のソウルで開催される。そこでこの2点が強調され、共通理解が図られることになる。
 一方、シミュレーションをレフェリーが見破ることができず、ファウルを犯したと判定されて退場処分になった選手については、FIFAの規律委員会がビデオで検討し、次の試合の自動的な出場停止処分が解除される可能性があることも確認された。ただし、これはワールドカップに限ってのことである。

 日本代表にとって切実な問題は、ベンチ前のテクニカルエリアに、監督といっしょに通訳が出ていくことができなくなったことだ。テクニカルエリアにはいるのは常時ひとりであることが確認され、監督が戻った後でなければ、通訳は出ていくことができなくなった。
 ことし決められたルール改正の主要ポイントは、以下の2点。いずれも小さなものだが、ワールドカップに限らず、7月からはすべての試合で適用されることになる。
 第1のポイントはユニホームのシャツの下に着るアンダーシャツについて。新ルールでは、1色で、広告はもちろん、どんなメッセージも書いてはいけないことになる。最近、得点後にシャツをたくし上げてアンダーシャツに書かれたメッセージを示す選手が多い。妻や子どもの誕生日を祝うなど、家族に向けたメッセージが大半だが、なかには政治的なメッセージを示す選手もいる。いずれにしても、サッカーの試合中にすべきことではないので、いかなるメッセージも禁止ということになった。

 第2のポイントは、けがをしてピッチの外で治療を受けたときのプレーへの復帰方法だ。新ルールでは、プレーが止まったときでないと中にはいれないことになった。現行のルールでは、プレー続行中でも、レフェリーの許可があればはいれることになっている。大きな変更だ。
 サッカーのルールは、全世界で共通であるだけでなく、ワールドカップから少年まで、基本的にすべて同じだ。毎年のルール改正を正確にフォローし、観戦や自分自身のプレー、あるいは指導に反映していくことが必要だ。
 
(2002年3月20日)
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