サッカーの話をしよう
No.422 JFA登録を200万人に
「現在約80万人の登録選手数を、3年後には200万人にまで増やす」
日本サッカー協会の第10代会長に就任した川淵三郎氏が、自らの目標のひとつとしてこのような数字を挙げた。
日本サッカー協会は、傘下の47都道府県協会を経由して加盟チームの登録を受け付けている。サッカーはチームスポーツだから、個人での登録はできない。各チームは、登録の際に全登録選手のリストを提出し、登録選手数分の登録料を納める。
こうして正式に日本協会に登録されたのが、2001年末現在で2万8184チーム、選手数にして78万8125人。それを3倍弱の200万人にしようというのが、川淵会長の話の意味だ。
国際サッカー連盟(FIFA)が2000年に全世界のサッカー人口を調査した。登録サッカー人口が最も多いのがアメリカで約389万人。それにドイツ(345万人)、イングランド(230万人)が続く。日本の80万人は、世界で6番目という数字だ。
悪くはない。しかしこの数字は、右肩上がりに伸びてきたものではない。96年に約3万チーム、90万人に達したものの、その後、徐々に減ってきているのである。
その一方で、フットサルや各地の市民大会など、日本協会に登録していなくてもできるサッカー自体は年々活発になってきている。FIFA発表の資料によれば、登録していない日本のサッカー人口は約250万人。しかし精密な調査による数字ではない。
川淵会長は、登録選手数を増やす手段として、遅れている女子サッカーの振興とともに、40代以降のシニアと少年サッカーの振興を、重要なポイントとして挙げた。
日本のシニアサッカーはすでに半世紀を超す歴史をもっていて、各地で盛んに行われている。日本サッカー協会がチーム登録に「シニア」のカテゴリーを設けたのは2000年のこと。現在は大会の整備などを行っているが、まだ登録数は数千人にすぎない。
少年チームでは、チームに何十人いても、日本サッカー協会の公式大会に出場しそうな少年しか登録しないことが多い。協会に納める登録費を抑えるためだ。
たしかに、女子、シニア、少年は重要なポイントだ。しかし同時に、日本協会や都道府県の協会とは無関係に活動している区や市町村のサッカー協会に加盟し、地域で活動しているチームを仲間に加えることが大きな課題ではないか。区や市町村はグラウンドをもっていて、苦労なく試合をすることができるから、チームはどんどん増えている。
日本協会に登録しなくてもサッカーが楽しめるのだからそれでいいという考えもあるだろう。しかし日本のサッカーや日本代表チームを支える最も基礎的な部分は、全国のサッカーチームであり、サッカー選手にある。
登録することによって、代表チームが本当に自分たちの代表となる。そして、登録することは、代表チームを支援するという意味にもなる。
選手ひとりあたりの登録料として、年数千円かかる。チームでまとめるとけっこうな額になる。そしてその見返りが、ホームゲーム用のグラウンド探しに苦労する都道府県のリーグや1回戦で負けてしまうカップ戦への参加だけでは、日本協会への登録をためらうのは当然だろう。
日本サッカー協会はまず非登録のサッカーの現状を調査し、区や市町村などでサッカーをしている人びととよく話し合って、日本協会への登録の意味と意義をわかりやすく説明しなければならない。そして同時に、誰もがその一員になることが誇りに思えるような、魅力ある組織にならなければならない。
(2002年7月24日)
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