サッカーの話をしよう
No.450 AFCチャンピオンズ・リーグ
「大連の3月はまだ寒く、ピッチコンディションが悪いんだ。プレーするというより、ファイトするような試合になるだろう。どのチームにもチャンスはあると思う」
鹿島アントラーズの優勝で幕を閉じた「A3マツダチャンピオンズカップ」の記者会見の席上、こんな話をしたのは、中国の大連実徳のミロラド・カサノビッチ監督。3月に大連で行われる「AFCチャンピオンズリーグ」の準々決勝リーグについて質問されての返事だった。
アジア・サッカー連盟(AFC)は、昨年8月に「AFCチャンピオンズリーグ」のスタートを発表した。従来の「アジアクラブ選手権」と「アジア・カップウィナーズ選手権」の2大会を統合し、クラブ大会を一本化したものだ。
ヨーロッパで大成功を収め、毎年数百億円の収入を記録している「UEFAチャンピオンズリーグ」の成功にならったものであるのは言うまでもない。強豪クラブに国際的な競争力をつけさせるとともに、スポンサーシップやテレビ放映権の販売を強化することが大きな狙いだった。
発表が行われた8月13日には、早くも予選第1ラウンドが始まり、以後、東西に分かれての予選ラウンドを経て準々決勝リーグ(3月9日から16日)に出場する16クラブが決まった。4クラブずつ4グループに分かれて戦い、A組、B組が東地区、C組、D組が西地区。各グループの首位が準決勝に進出する。
日本からは、2001年Jリーグ・チャンピオンの鹿島アントラーズが予選ラウンドを経ずにA組にシードされ、天皇杯優勝の清水エスパルスは昨年10月の予選第2ラウンドから登場、勝ち抜いてB組にはいった。
残念なのは、「リーグ」といってもホームアンドアウェーではなく、1都市での集中開催であることだ。A組はタイのバンコク、B組は中国の大連に集まり、わずか6日間で1回戦総当りを行ってグループ勝者を決める。先日の「A3」と同じ形式だ。
A組は、地元タイのBECテロ・サーサナ、上海申花、韓国の大田シチズンという強豪ぞろいだ。強力な守備で「A3」を勝ち抜いた鹿島だが、エース柳沢を負傷で欠き得点力不足が懸念される。
B組の清水のライバルは、「A3」に出場した大連実徳と韓国の城南一和、そして予選から勝ち抜いてきたタイのオソツパ。大木新監督になった清水が、寒く、グラウンドの悪い大連でどう戦うか。
東地区には、予選ラウンドを含め13カ国のクラブがエントリーしていたのだが、A、Bの準々決勝リーグに残ったのは、いずれも、日本、韓国、中国、タイの4カ国となった。けっして簡単な戦いでないことは、「A3」の試合を見れば明らかだ。
この準々決勝リーグを勝ち抜くと、以後はホームアンドアウェーで4月に準決勝、5月に決勝となる。優勝賞金は50万ドル(約6000万円)。これまでのアジアの大会にはなかった高額だ。
今週月曜、AFCのハマム会長(カタール)は、「この大会の優勝チームが、毎年UEFAチャンピオンズリーグの優勝チームと対戦することになった」と語った。アジアでの1回戦制で、ことしから行われるという。
放映権の販売がAFCの思惑どおりには進まず、収入はまだ不安がある。焦点の準々決勝リーグがホームアンドアウェー形式でないのも、クラブサッカーの本質から外れている。しかしインドでの予選ラウンドで8万5000人という大観衆を記録するなど、「AFCチャンピオンズリーグ」は、アジア・サッカーの大きな活力剤になる可能性を秘めている。まずは、3月9日からの準々決勝リーグに注目したい。
(2003年2月26日)
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