サッカーの話をしよう
No.546 ワールドカップチケット販売中
3月30日のワールドカップ予選、バーレーン戦のチケット申し込みが81万枚を超したという。会場となる埼玉スタジアムの収容定員は6万3700人だから、13倍という高い競争率だ。
あれほど盛り上がった2月の北朝鮮でさえ、申し込み枚数は約35万だった。北朝鮮戦の劇的な勝利が、ワールドカップ予選に対する関心をあおりたて、熱心なファンさえチケット入手が困難な状況をつくり出してしまったようだ。
さて、その予選を無事に勝ち抜くことができれば、次は来年6月にドイツで開催されるワールドカップ決勝大会のチケットが気になるところ。実は、すでに販売の受け付けが始まっているのだ。
日本代表が初めてワールドカップに出場した98年フランス大会では、日本の旅行会社の多くが詐欺にあって必要な入場券を入手できず、ツアーを申し込んでフランスでの応援を楽しみにしていたたくさんのファンを悲しませた。地元開催の2002年大会には、高倍率の抽選を乗り越えても、国際サッカー連盟(FIFA)管理下のチケットビューローからの配送が遅れたり、大量の売り残しが出るなど、トラブルが相次いだ。
「チケット販売は、ワールドカップの運営で最も重要で、しかもデリケートな案件。適切で、しかもわかりやすいシステムを、私たちは全力を挙げて構築する」
2003年8月、ドイツ大会組織委員会会長のフランツ・ベッケンバウアーはそう宣言した。
2002年大会では、チケット販売はFIFAが一切を取り仕切ったが、粘り強い交渉の末、ベッケンバウアー会長はそれを地元組織委員会の手に取り戻した。会長の下でチケット販売を担当するホルスト・シュミット副会長は、32年前、1974年のワールドカップ西ドイツ大会でもその業務の責任者だったという大ベテランの専門家だ。
実はこのときの交渉で、ベッケンバウアー会長は、大会時の宿泊に関する業務もFIFAの手から取り戻している。彼がこの2つにこだわったのは、「ファンにできるだけ安価でワールドカップを楽しんでもらいたい」という意図からだった。
そのおかげで、チケット料金は2002年大会と比べると大幅に下落した。たとえば、1次リーグの試合で最も安い「カテゴリー4」という券種なら、35ユーロ(約4900円)。2002年大会で最も安いチケットは7000円だったから、ちょうど3割安くなったことになる。決勝戦の最も安いチケットは120ユーロ(約1万6800円)。2002年大会の半額だ。
そのワールドカップ・チケットの第1次販売受け付け、81万2000枚分が、2月1日から始まっている。申し込み用紙は、インターネット、ファクス、郵送などで入手することができる。締め切りは3月31日。その日までに申し込みのあったものを4月中旬に抽選し、当選者には順次通知されるという。
開始されてわずか2日間で100万枚以上の申し込みがあったというが、その後は沈静化し、2月末現在で申込者数約40万人、チケット枚数にして約220万という数字だという。その大半はヨーロッパからの申し込みで、ドイツ国内からのものが全体の85パーセントにもなる。EU(欧州連合)の法律により、「ドイツ国内限定販売」ということができないのだそうだ。
今大会全64試合の総キャパシティは337万席。そのうち293万席が販売に回される。第1次の抽選で外れても、来年の4月までにあと3次にわたる販売が行われ、5月からは返却されたチケットの販売も行われる予定だという。いずれにしても競争率は高いが、行こうと思っているなら、早いうちに動き始めたほうがいいかもしれない。
(2005年3月2日)
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