サッカーの話をしよう

No.562 オフサイドが変わる

 ワールドカップ予選が一段落したと思ったら、ワールドユース、コンフェデレーションズカップと、深夜のテレビ観戦が続いて寝不足のファンも多いだろう。でももう少しだ。今週末のワールドユース決勝戦ですべてが終わる。来週からはぐっすりと眠れる。
 ところで国際サッカー連盟(FIFA)が主催するワールドユースとコンフェデで、副審のオフサイドのシグナルのタイミングがずいぶん遅くなったのに気づいたファンも多いだろう。ことしのルール改正で第11条(オフサイド)に新しく「国際評議会の決定事項」が付け加えられ、解釈が変わるためだ。

 「オフサイド・ポジション」にいるだけでは反則にならない。反則になるのは、このポジションにいる選手が「積極的にプレーにかかわった」ときだ。ところがこれまでのルールに書かれたその説明が簡単すぎてわかりにくかった。
 1 プレーに干渉する
 2 相手競技者に干渉する
 3 その位置にいることによって利益を得る
 ルールブックにはそう説明されている。だが1の「プレーに干渉する」とはどういう状態なのか----。従来の解釈では、パスに向かって走るなど積極的に動くだけで「干渉」とみなされ、その時点で副審が旗を上げていた。
 しかし7月1日に発効する新しい「決定事項」には、ボールに実際にタッチするまでは反則にならないと明記されることになった。その結果、副審は、オフサイドの状況があっても、誰かがボールに触れるか、ボールがピッチ外に出るまでは旗を上げられないことになったのだ。ワールドユースとコンフェデでは、この改正を先取りして実施することにしたのだ。

 大会が始まる前に、FIFAはホームページ上でオフサイド・ルールの新しい解釈の例を動画入りで説明している。13例のなかには、これまでなら明らかに反則になったケースが「オフサイドではない」とされているものがある。
 オフサイド・ポジションにいる選手Aが出されたパスに向かって走る。しかし最初にこのボールに触れたのはその選手ではなく、オフサイドではないポジションにいた別の選手Bだった。Aはボールに触れていないのだから、反則ではないというのだ。
 「旗も上がらず、笛も吹かれないからオフサイドではないと思って走ったら、ボールに触れたとたんに旗が上がり、笛が吹かれる。一生懸命に走った選手がかわいそうだ」
 このような感想を持ったファンも多いだろう。もしかすると、今後、この新解釈を利用して、オフサイド・ポジションにいたことを知りながらパスに向かって走り、相手を油断させておいて自分はボールに触れず、味方にプレーさせようとする選手も出てくるかもしれない。

 私は、多少のトラブルがあっても短期間のことだろうと思う。新解釈の狙いは、できるだけプレーを継続させ、サッカーをより魅力的なものにしようという点にある。
 オフサイド・ポジションの選手にパスが出されても、味方が気づいたら「触るな!」と声をかけ、他の選手がボールを追えばいい。そうすれば、無粋なオフサイドの笛で試合が中断され、ため息がもれることは減るだろう。
 副審にとっても、オフサイド・ポジションの選手が最終的にボールに触れたか触れないかで判定すればいいのだから判断がシンプルになるはずだ。しかし実際には、瞬間的なプレーだけでなく、たくさんの情報を整理して判断しなければならなくなる。主審との連携、コミュニケーションもより重要になるだろう。
 7月1日から世界中で適用される新解釈。ぜひFIFAのホームページで13の動画をチェックしてみてほしい。

(2005年6月29日)
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