サッカーの話をしよう
No.643 JFLに異変あり
日本フットボールリーグ(JFL)に異変が起こっている。
Jリーグ(J1、J2)の下に位置するJFL。企業チーム、大学チームもはいっている全国リーグだが、Jリーグを目指すプロ体制のクラブもいくつか在籍している。このリーグで上位を占めることがJリーグ昇格条件となっているからだ。いわば、JFLはJリーグへの登竜門ということになる。
とはいっても静岡県のホンダFCを中心にした企業チームもしっかりとしたサッカーを見せており、プロ体制といっても財政基盤の弱いクラブにとってはこれまで苦戦が続いていた。Jリーグへ上がればスポンサーもつくが、JFL所属ではなかなか資金が集まらないのが現状だからだ。
昨年のJFLも、優勝はホンダFC、2位は佐川急便東京、3位は佐川急便大阪と、企業チームが上位を占めた。ことしは佐川の2チームが合併したため、ホンダと佐川の優勝争いかと予想されていた。
しかしフタを開けてみるとJリーグを目指すクラブが大躍進を遂げ、周囲を驚かせている。首位は栃木SC、6試合を終わって5勝1分け、勝ち点16と快調だ。元FC東京のMF小林成光が3ゴール、元柏のFW山下芳輝が2ゴールを挙げ、見事に牽引車役を果たしている。
2位は岐阜FC、これも5勝1分けだ。栃木SCは昨年7位。岐阜FCは東海リーグからことしJFLに昇格したばかりの「新顔」。このほか、ロッソ熊本も4勝2敗の6位と、上位をうかがう好位置につけている。
昨年までは上位2チームにはいることがJリーグへの昇格基準になっていたが、Jリーグは今季からその基準を改め、すでにJリーグ準加盟の審査を通ったクラブなら、4位以内にはいれば昇格を認めることにした。そして、上記の3クラブとともに、ガイナーレ鳥取にも準加盟の資格を認めた。ガイナーレ鳥取は1勝2分け3敗の12位と出遅れているが、1980年代に松下電器をゼロの状況から育てた水口洋次監督の指導で、今後どんどん力をつけていくに違いない。
「Jリーグ準加盟」が一挙に4クラブもできたことで、今季のJFLは大きく活気づいたようだ。優勝候補の筆頭と予想されていた佐川SCも本拠地を滋賀県の守山市に移し、徐々に「合併効果」を見せ始めて5勝1敗、首位栃木SCとは勝ち点1差の3位につけている。その下には、31歳の依田博樹新監督に率いられた横河武蔵野FCが4勝2分けで食い下がっている。
クラブ名からも明白なように、「準加盟」の4クラブはいずれも既存のJリーグクラブがない県を本拠としている。JFL全体を見ても、全18チームが秋田県から沖縄県まで17の都府県に散り、うち9県はJリーグの「空白地帯」だ。JFLには、近い将来の日本の「サッカー地図」が明確に示されている。
(2007年4月18日)
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