サッカーの話をしよう

No.645 誤審問題、もっと議論と検証を

 「ゴールデンウイーク」。Jリーグにとってはたしかに「黄金の1週間」だ。観戦に最高の季節。1年を通じて、家族連れの観客が最も多い時期だからだ。ことしも、Jリーグは、4月28、29日の週末と、5月3日、6日を使い、この期間に3節、J1とJ2を合わせて計44もの試合を全国で展開する。
 しかしことしのゴールデンウイークの初日、4月28日は、「事件」続きとなってしまった。柏×名古屋が試合前の雷雨のために49分間もキックオフが遅れるという珍事があった。しかしそれは「始まり」にすぎなかったようだ。この日のJ1では、試合結果を左右する大きな「誤審」が3つも起こってしまったのだ。

 横浜FC×清水では、自陣ゴール近くでボールをコントロールしてクリアしようとした清水DF市川が横浜FCのDF和田に両手で押され、そのままボールがゴールの中にこぼれたのが得点と認められてしまった。
 神戸×F東京では、右CKを神戸DF河本がヘディングシュート、ボールはGKの体の下にはいり、完全にゴールラインを割っていたが、主審も副審もこれを確認できず、ゴールが認められなかった。
 さらに新潟×横浜FM戦では、新潟DF坂本がペナルティーエリアの外でハンドの反則をしたのを、「エリア内」としてPKの判定が下された。この試合はホームの新潟が0−6という大敗を喫したが、横浜FMのMF山瀬功が決めたPKは前半終了近くの2点目。大きな意味をもっていた。

 こうしたなかで、「誤審だ」という報道はあっても、きちんとした議論や検証が行われていないのが残念だ。
 3人(第4審判を入れても4人)の目ですべての判断を下さなければならないサッカー。当然、すべてを見ることができるわけではない。死角もあるし、見るのが難しいタイミングもある。審判たちは、そうした「穴」をなくすために、トレーニングし、技術の向上に努めている。
 審判間のコミュニケーション向上で防げるミスもある。ワールドカップで使われた審判間のワイヤレス通話装置はJリーグではまだ使われていないが、それでもジェスチャーや旗の振り方など、意思を伝え合うための工夫がなされているという。
 こうした努力があってなお起こる「誤審」。それを「審判のレベルが低い」などというひと言で済ませていいのか。

 ひとつひとつの事例で、審判のポジショニング、その瞬間、何を予測し、何に注意を払っていたのかなど、詳細に検討し、なぜミスが起こったのかを明らかにする必要がある。そしてメディアには、それをきちんと伝え、理解を広める使命がある。感情的になっても、ただ審判たちを非難するだけでも、何も生まれない。ミスを減らすために、あらゆる方面の努力が必要だ。
 「誤審」は、チームやファンだけでなく、審判員にとっても、不幸なものだからだ。
 
(2007年5月2日)
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1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。

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