サッカーの話をしよう
No.668 過密日程の解消を
Jリーグで首位独走のホームチームはあえいでいた。次々と襲ってくる相手のシュートにDF陣がなんとか足を伸ばして止め、ゴールを守った。ボールを支配して攻め込んでいたのは、下位に低迷するビジターチームだった...。
ビジターの大分トリニータが見事な攻守を見せていたのは間違いない。しかしホームの浦和レッズがこれほどの劣勢を余儀なくされた原因が疲労にあったのも確かだ。
浦和は9月15日のJリーグ第25節から23日間で7試合という過密日程をこなしてきた。そのなかにはAFCチャンピオンズリーグの3試合が含まれ、うち2試合は韓国への遠征だった。7試合目、10月7日の対戦相手・大分は、この間に1週間に1試合のペースで4試合。コンディションの差は明白だった。
サッカーは「週1試合」が基本だ。週末ごとに試合をこなす形だ。試合の直後はまず体力の回復を図り、その後は体力、技術、戦術のトレーニングを入れながら翌週の試合に向けて準備する。このリズムができれば、それぞれの試合内容が充実し、選手たちはシーズンを通じて力を伸ばしていくことができる。
もちろん、たまには週の中間、たとえば水曜日に試合があってもよい。この間は、次のゲームに向けて体調を整えるだけになるが、すぐに回復できる。しかしこれが続くと、選手たちはただ消耗していくだけとなる。パフォーマンスは著しく落ちてしまう。
2005年には横浜F・マリノスが4月から5月にかけて44日間で13試合という超長期の過密日程を余儀なくされた。「13連戦」の成績は5勝4分け4敗。4月下旬以降の8試合に限れば、2勝2分け4敗という悲惨さだった。03年、04年とJリーグを連覇した強豪チームを急速に衰退させたのがこの過密日程だったことは間違いない。
過密日程を強いる原因はリーグとカップ戦だけではない。一部の、そして非常に優秀な選手たちは、代表チームの日程もこなさなければならない。ことしの浦和の例でいえば、5人もの選手が9月上旬の日本代表のオーストリア遠征にも参加した。彼らは「9連戦」ということになる。そのすべてにほとんどフル出場だったMF鈴木啓太が、最後の大分戦でも動きの質だけでなく量も失わなかったのは、本当に驚きだった。
過密日程は選手たちの精神力や自己管理能力を鍛えるかもしれない。しかしそれ以上にマイナスになるものが多い。疲労が重なれば重大な負傷や故障につながる。それを強いているのは、リーグやクラブ、そして協会(代表チーム)のエゴだ。彼らが自分たちの利益を主張し合った結果が、現在の過密日程だ。
私は、この日程が「仕方がない」ものであるとは思わない。リーグ、クラブ、そして協会が「選手第一」の考えを取り戻し、真剣に「選手のためにあるべき日程」の模索を始めなければならない。
(2007年10月10日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。