サッカーの話をしよう
No.680 シーズン制変更の検討を
新年が明けたばかりなのに、来年、そして再来年のことを考えている。
寒風のなかで高校や大学の試合は続いているが、日本サッカーのシーズンは元日の天皇杯決勝で終わった。鹿島と広島の間で争われた決勝には4万6357人もの観客が集まったが、天皇杯は年々印象の薄い大会になりつつあるように感じられた。
天皇杯で上位を占めるJリーグのクラブでは11月末までに翌年に向けての契約条件の提示が終了し、選手たちのモチベーションを保つことが難しい。12月上旬に終了したJリーグで選手たちは力を使い果たし、天皇杯は、まるで「ポストシーズン大会」のような様相を呈しているのだ。
3月に開幕し、12月に閉幕する「単年制」で行われている現行のJリーグを、夏に開幕し、翌年の春まで続く「越年制」にしたらどうかという話が、10年以上も前から提案されている。ヨーロッパの大半の国で採用されている形だ。その形に日本のシーズンを合わせ、同時に選手の契約期間も動かせば、ヨーロッパとの選手の交流に非常に都合がよい。
世界中で単年制のシーズンにするべきだと、国際サッカー連盟のブラッター会長が主張したこともあったが、ヨーロッパからはまったく相手にされなかった。国際交流をスムーズにするためにも、「越年制」へのシーズン変更はいずれ不可避になると思われる。
「越年制」にすれば、天皇杯も、現行のように元日決勝の日程でも「シーズン中」の大会になる。シーズンの終盤、たとえばゴールデンウイークあたりに決勝を行うという形も考えられる。年末に日程を詰め込むより、準々決勝あたりからホームアンドアウェーの2回戦制にすれば、人気回復も図れるのではないか。
ことし2月6日から6月22日まで行われるワールドカップのアジア3次予選を突破すれば、秋には4次予選がスタートし、来年の前半にはその大詰めを迎える。もしかすると、来年の秋には、アジア内の、そしてオセアニアとのプレーオフを合計4試合も戦うことになるかもしれない。そして2010年にはワールドカップ南アフリカ大会(6月11日開幕)が待っている。
このタイミングで、思い切ってシーズン制を変えたらどうだろうか。2009年のJリーグを、余裕をもった日程にし、2010年の春に閉幕する日程にするのだ。そうすれば、今回はワールドカップの予選や決勝大会に向けての日本代表の強化日程もしっかりと取ることができる。
日本代表だけでなく、クラブチームの国際舞台での活動も重要な要素になってきた日本のサッカー。2007年に世界で5位の1試合平均観客数を記録したJリーグは、さらなる観客数増加をめざし、さまざまな取り組みをしている。近い将来にはその地位にふさわしい資金力も実力もついてくるだろう。クラブが世界に伍して戦うためにも、「越年制」へのシーズン変更は意味のあることだと思う。
(2008年1月9日)
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