サッカーの話をしよう
No.695 日本のメッシたち
気がつけば「メッシだらけ」だった。
リオネル・メッシ。スペインのバルセロナでプレーするアルゼンチン人アタッカー。身長169センチという小柄ながら、17歳でバルセロナの1軍にデビューし、ドリブルテクニックであっという間にスターになった。18歳でワールドカップに出場、現在20歳だが、すでに「世界ナンバーワン」の呼び声も高い。そのメッシのような選手が、Jリーグでも次々に活躍するようになったのだ。
東京ヴェルディの河野広貴とFC東京の大竹洋平はともに18歳、ともに165センチで、左利きだ。左利きながら右サイドからのドリブルで相手守備を崩す動きはメッシそっくり。決断が早く、大柄なDFたちの体当たりにも負けない強さがある。
J2のセレッソ大阪では、19歳の香川真司が攻撃を引っ張っている。こちらは173センチとやや身長は高く、右利きだが、左サイドにポジションを取り、果敢に縦に抜いてチャンスをつくる。「右利きのメッシ」というところだろうか。
サッカーはイマジネーション(想像力)のスポーツである。少し前まで、日本の少年たちはロナウジーニョ(バルセロナ、ブラジル代表)の魔法のようなテクニックに夢中だった。しかしいまはメッシだ。
大きなDFたちを手玉を取るように抜き、チャンスをつくるだけでなく、自ら決定的なゴールを挙げる。少年たちはメッシのプレーを頭に焼き付け、そのステップやフェイントをまねる。何よりも、ピッチ上のプレーとして表現されるメッシのスタイル、そして情熱に影響を受ける。
香川は、今週3日間行われた日本代表候補の合宿に招集された。大竹は、やはり今週のU-23日本代表の合宿に追加招集された。先週末のJリーグで、大竹は交代出場した直後に決勝点を決め、見事なスルーパスでもう1点のアシストをした。いまのところ、所属のF東京では交代出場が多いが、短時間でも試合の流れを変えるような活躍ができることが評価されたのだろう。
河野にはまだ「飛び級」の代表招集はないが、昨年のU-17ワールドカップで「世界」を経験しており、東京Vではすでにサイド攻撃の切り札のような存在になっている。
「メッシたち」の活躍は日本代表を活性化させ、Jリーグを盛り上げる。そしてそれを見つめる日本の少年たちに新しい「イマジネーション」を与える。
(2008年4月23日)
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