サッカーの話をしよう

No.699 国際親善試合の危機

 「国際親善試合」が死にかけている。
 コートジボワールとパラグアイを迎えてのキリンカップ。日本代表にとっては6月のワールドカップ予選4試合に向けてチームづくりの重要な機会だった。しかし来日2チームは、いずれも大幅に主力を欠いていた。
 代表チームが出場する国際試合には「公式戦」と「親善試合」がある。ワールドカップやその予選、アジアカップやその予選などが主な公式戦。それ以外が親善試合だ。
 サッカー史上最初の国際試合はスコットランド対イングランドの親善試合。1872年11月30日にグラスゴーで行われた。以来半世紀以上、国際試合の大半は親善試合だった。ワールドカップが始まるのは1930年のことだからだ。
 かつては、親善試合にも大変な重みがあった。「20世紀最高の試合」とまで言われるイングランド対ハンガリー(1953年)も親善試合だった。当時の親善試合は、文字どおり国際親善の推進役を果たしていた。
 だが現代、親善試合は重みどころか「やっかいもの」扱いだ。勝敗に大きな意味がない試合に、なぜ見返りもなく大事な選手を出さなければならないのかと、選手をかかえるクラブは不満を訴える。選手も、休むか、クラブの練習に出ていたほうがいいと考える。
 この傾向は、近年急速に財力をつけ、同時に過密日程になったヨーロッパのクラブに強い。主力の大半がヨーロッパでプレーするコートジボワールのような国は、親善試合にベストチームを集めるのは至難の業だ。
 国際サッカー連盟(FIFA)は、クラブの日程と競合せずに代表チームの試合を組めるよう、全世界に共通する「国際試合カレンダー」を定めた。ところがこのカレンダー自体に「親善試合軽視」の思想がある。
 2014年まで決まっている「カレンダー」の考え方では、親善試合は前々日に集合して試合をするぐらいしか日程を取れない。このままでは、遠くない未来に親善試合ができなくなる恐れもある。
 現代の親善試合は単純ではない。強化のために必要と組む場合もある。その一方で、カネ儲け目的が明白な試合(近年のブラジル代表が好例だ)もある。
 協会財政を潤すためだけの試合では、クラブや選手からそっぽを向かれるのは避けられない。親善試合の要件や基準を明確にし、誰もが喜ぶ形で再構築することが、親善試合生き残りの唯一の道だ。
 
(2008年5月28日)
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