サッカーの話をしよう
No.709 岐路に立つオリンピック
100年の歴史をもつオリンピックのサッカーが転換期を迎えているようだ。ヨーロッパのクラブとの対立のなか、国際サッカー連盟(FIFA)のブラッター会長は、オリンピックの男子サッカーを20歳以下の大会にすることを示唆し始めた。
1908年ロンドン大会でオリンピックの正式種目になったサッカー。1920年代までは事実上の「世界選手権」だった。しかし1930年にプロ、アマにかかわらず出場できるワールドカップが始まり、人気が高まると、「アマチュア限定」のオリンピックは金メダルが東欧の「国家アマ」に独占され、魅力の乏しい大会となっていった。
1980年代にオリンピック憲章から「アマチュア」が外され、サッカーも84年ロサンゼルス大会からプロの出場が解禁になった。ただFIFAがワールドカップとの差別化を図ろうといろいろ制約をつけたため、「二流の世界選手権」の印象はぬぐえなかった。
88年ソウル大会でテニスが64年ぶりに正式競技に復帰、女子でグラフ(西ドイツ)が優勝するなど世界のトップクラスが出場して話題になった。国際オリンピック委員会(IOC)はサッカーでも世界のスーパースターが出場する大会にと要望したが、FIFAは応じず、逆に92年バルセロナ大会から23歳以下の年齢制限をつけた。
この当時、世界のサッカーでは代表チームの主力は20代の後半が中心で、23歳以下の選手たちはクラブでようやく出番がきた程度だった。戦術的要請が増えて選手の成熟に時間がかかるようになっていたからだ。
しかし21世紀にはいり、世界のサッカーでは10代の活躍が目立つようになった。クラブや協会が真剣に育成に取り組んだ結果だ。そのシンボルが、17歳でFCバルセロナのエースとなったメッシ(アルゼンチン代表)だ。
看板スターがオリンピックで最長1カ月間も抜けられるのは痛い。クラブが選手を出し渋り、それがスペインのバルセロナだけではなく、ドイツのクラブにも広がった。FIFAは「23歳以下の選手がオリンピック代表に招集されたら、クラブはそれに応じなければならない」と通達を出し、選手たちは北京に向かったが、クラブ側は徹底抗戦の構えだ。
力が増す一方の欧州クラブと各国代表チーム活動との調整に苦慮するFIFA。IOCの抵抗は必至だが、2012年ロンドン大会から「20歳以下」になる可能性は十分ある。
(2008年8月6日)
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