サッカーの話をしよう
No.712 友情の写真集
先週バーレーンに向かったカタール航空機は、エジプトなどアフリカ諸国への観光客で満員だった。たしかに中東は日本からアフリカへの中継地として最適かもしれない。
「アフリカ」という言葉が浮かんだとき、ふいに、2年半前に急逝した友人の顔が頭をよぎった。富樫洋一さん。私と同じ年代のサッカー記者であり、テレビでも広く活躍、「ジャンルカ」のニックネームでファンから愛されていた。2006年2月、アフリカ選手権の取材中に体調を崩し、帰らぬ人となった。享年は54歳だった。
月日の流れは速い。それから2年、アフリカ選手権はすでに次の大会が開催され、エジプトが連覇を飾った。
昨年末、カメラマンの清水和良さんは、ことしのアフリカ選手権を取材するに当たって富樫さんを追悼する写真集にまとめようと考えた。清水さんは、90年代から7大会もいっしょにアフリカ選手権を取材してきた。富樫さんをしのぶには、アフリカのサッカーの魅力を表現するのがふさわしいと考えたのだ。
ライターの金子達仁さんが賛同し、ふたりで発起人になって本の制作が決まった。そしてランダムハウス講談社から『THE AFRICAN FOOTBALL』として出版されることになった。
B4変形、上製、全128ページという立派な写真集だが、ほぼすべての写真を出した清水さんにも、現地に赴いて原稿を書いた金子さんにも、そしてていねいなキャプションを書いたライターの戸塚啓さんにも、大会取材費はおろか、原稿料も支払われない。印税はすべて富樫さんのご遺族に贈られることになっているからだ。
その友情の仲間入りをしたいと、多くの人が富樫さんへの送る言葉を寄せている。日本サッカー協会前会長川淵三郎さんからのメッセージもあるという。
しかし清水さんは、サッカー界や記者仲間からだけでなく、広くファンからのメッセージも載せたいと考えた。それこそ、常にファンの立場に立ってサッカーを考え、独自の表現でサッカーの魅力を伝えてきた富樫さんへのはなむけにふさわしいと思ったからだ。
そろそろ写真集をまとめなければならない。50字から200字の間であれば、どんな形のメッセージでもかまわない。自由な発想こそ、「富樫流」だった。遠慮なくメッセージを送ってほしい。
送り先は、africa.togashi@gmail.com、ランダムハウス講談社・大森春樹さん。
(2008年9月10日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。