サッカーの話をしよう
No.724 第3、第4の副審
1試合にレフェリーが6人―。従来の主審1人、副審2人、第4審判に、副審をもう2人加えたレフェリングの実験は、おおかた好評だったようだ。
「ゴール判定のテクノロジーではなく、両ゴール裏にも副審を」というヨーロッパ・サッカー連盟(UEFA)会長ミッシェル・プラティニの提案の実験が認可されたのはことし3月のこと。その実験が、10月から11月にかけて行われたUEFAのU-19選手権予選の一部で実施された。
「第3、第4の副審」は、ホイッスルはもちろんフラッグももたず、両ゴールの脇に立った。そしてシュートがゴールラインを越えたかどうかやペナルティーエリア内での反則を集中的に見守った。
彼らの役割は、主審から見にくい距離や角度の出来事を監視し、主審にアドバイスを送ることだ。6人の審判員たちは、無線で結ばれたマイクとイヤホンで互いにコミュニケーションを取る。
今回の実験では、新しい副審はピッチ内にはいってもいいが、GKより前に出てはいけないとされた。だがゴールの左右どちら側に立つかは、試合によって変えられた。実験に参加した審判員たちの間では、ピッチに向かってゴールの左側にいたほうが、主審および従来からの副審と3人で挟み込むようにペナルティーエリアを見やすいのではという意見が多いらしい。
「別に違和感はなかった。主審を助けてくれる人がひとり増えるのは、より正確な判定につながると思う」
2人の「ペナルティーエリア副審」を使ったチェコ×キプロス戦で主審を務めたダグラス・マクドナルド氏(スコットランド)は新システムを歓迎した。
その試合で「新副審」の1人となったケイラム・マーレイ氏(スコットランド)も、「正直、最初の10分間ほどはとまどったが、その後はうまくいったと思う」と肯定的だ。
「少し前に主審を2人するという試みもあったが、今回の実験はサッカーの本質を変えず、従来どおり主審1人で、しかもより多くの目をもつということを意味している」と、UEFAのプラティニ会長は説明している。
実験結果は来年2月にFIFAに報告されるが、本格的に実施されるにはまだ時間がかかりそうだ。UEFA審判委員会のマルク・バタ委員(フランス、元国際審判員)も、「とてもではないが2010年ワールドカップには間に合わない」と話している。
(2008年12月3日)
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