サッカーの話をしよう
No.734 いまこそJリーグの力を
17シーズン目のJリーグの開幕が近づいてきた。2月28日の「富士ゼロックス・スーパーカップ」が終わると、その翌週、3月7日にはJリーグがスタートを切る。
今季は、栃木SC、カターレ富山、そしてファジアーノ岡山の3クラブが新加盟し、J1、J2とも18クラブ、計36クラブになったJリーグ。初めてJ1でプレーすることになったモンテディオ山形の活躍も楽しみだ。
私はことしほどJリーグの真価が問われているシーズンはないと思っている。「百年にいちど」とまで言われる経済危機のなか、地域生活に元気を与える存在として、Jリーグのクラブほどふさわしいものはないからだ。
16年前にJリーグがスタートしたとき、クラブは「バブル経済の申し子」のような存在だった。日本を代表する大企業が毎年10億円規模で財政支援して成り立たせようというものだったからだ。だがバブル経済はほどなく終焉を迎え、クラブは存立の危機に立たされる。90年代の後半にJリーグそのものが沈没してしまってもまったく不思議はなかった。
だがJリーグは生き残り、逆に発展期を迎えていく。2002ワールドカップ開催という追い風もあった。しかし何よりもクラブとリーグの「生命線」となったのは、ホームタウンのサポーターたちの存在だった。
ホームタウンの生活に不可欠な存在になることこそ生き残る道であることに気づいたクラブは、地域との結び付きを深める努力を続ける。大企業の支援がなくても地域との結び付きをベースにプロのサッカークラブを運営していくことができるとわかったとき、全国に再び「Jリーグ熱」が沸き起こった。現状の36クラブの他に、全国各地に数十のJリーグ昇格を目指す動きがあるという。
誰もがチャンピオンになれるわけではない。試合は勝つときも負けるときもある。しかしホームタウンの人びとにとって、Jリーグのクラブは「地域の息子」のような存在なのだ。自分たちそのものと言ってもよい。
だからこそ、ことしほどJリーグの真価が問われているシーズンはない。結果は関係ない。ともかく全員が力を合わせ、90分間にもっているものを出し尽くす戦いを見せなければならない。「サッカー」という枠を超え、地域の人びとに元気を与える力が自分たちにあることを、クラブも選手たちも自覚しなければならない。
(2009年2月25日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。