サッカーの話をしよう
No.771 ワールドカップ抽選会 準備は完了
「準備はすべて完了しました」
今週金曜日に行われるFIFAワールドカップ2010南アフリカ大会の組分け抽選会(ファイナルドロー)の総合プロデューサーを務めるジョージ・マゼラキスさんは誇らしげな笑顔を浮かべた。
ワールドカップの組分け抽選会は、かつては小さなイベントだった。巨大なショーになったのはいつからだろうか。日本が初めて出場権を獲得した98年フランス大会の抽選会はマルセイユのスタジアムで開催され、世界選抜対ヨーロッパ選抜の試合も行われて日本の中田英寿が出場した。
しかし今回の抽選会は過去の大会をはるかに超える大掛かりな規模になるようだ。これを本格的なワールドカップのスタートと位置付け、ホストシティのケープタウンと政府を挙げての事業にしたからだ。すでに国際空港の新ターミナルが稼働し、ケープタウンは「先進都市」の顔で世界からの客を迎える。
ファイナルドローは2時間ものテレビショーだ。カメラはドロー会場の「ケープタウン国際会議場」を飛び出し、完全に自動車を締め出した「ロングストリート(都心のメインストリート)」が何十万もの人で埋め尽くされ、南アフリカの人びとがどれほどワールドカップを待ち望んでいるかを見せてくれるという。
そのすべてをプロデュースしているのが、冒頭のマゼラキスさんだ。11月26日木曜日、国際会議場の広大なDホールにはすでに間口40メートル、奥行き30メートルの美しい舞台が完成し、報道陣に公開された。
ショーは全4部で構成される。第1部は出場32チームの紹介、第2部はワールドカップの歴史(若い世代に伝え継ぐため)、第3部は南アフリカの民族舞踊などのカラフルなショー、そして最後にクライマックスの「ドロー」となる。
準備に丸1年間を費やし、ショーに使う映像素材の制作だけで実に5000時間を要したという。1200人を超すスタッフ(うち380人はボランティア)が準備と運営のために働き、万全を期して警官を含む1587人が警備に当たる。
最も気になるのはドローというショーよりも抽選結果そのものだが、日本時間で5日土曜日午前2時から4時までの2時間の生放送で、来年の大会を待ち望む人びとの気持ちの一端でも感じ取りたいと思う。ちなみに、ドローの模様は世界の約200カ国に中継され、総視聴者数は3億1500万人にのぼると推計されている。
(2009年12月2日)
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