サッカーの話をしよう
No.772 ワールドカップ組分け決まる
「同じ組の他の3チームは、そろって、最も弱いのは日本と考えているだろう」
来年のワールドカップ1次リーグでの日本の対戦相手が決まった。アフリカの雄カメルーン、優勝候補の一角オランダ、そしてヨーロッパ予選で最大のセンセーションとなったデンマーク。世界のメディアは、冒頭のコメントのように、日本が決勝トーナメントに進出する可能性はほとんどないと、手厳しい。
日本国内でも「難しい組にはいった」という論評が少なくない。だがそんなことは抽選の結果を待つまでもなく明らかだった。
アジアの他の国とは同じ組にならないことは最初から決まっていた。抽選の手順が決まった時点でオセアニアおよび北中米カリブ海地区のチームとも当たらないことになった。トップシードの1チーム、ヨーロッパから1チーム、そしてアフリカあるいは南米から1チームという組では、どんな抽選結果でも世界の目から見れば「最下位候補は日本」となるのは当然だ。
オランダでは、抽選の最後の段階でくじが引かれた「ヨーロッパ枠」からポルトガルがはいらなくてよかったとの声が高いらしい。しかし日本にとってはデンマークもポルトガルも大差はない。なにしろデンマークは、予選でポルトガルに1勝1分けと勝ち越しているのだ。
対戦チームについての情報収集は重要だ。しかし「勝てるかどうか」という予想など何の意味もない。動かしようのない世界の評価を覆すために、日本代表が最大限の力を発揮できるよう、最大限の支援をしていくほかはないのだ。
現在の日本代表には明確な長所がある。中盤の正確なパスワークだ。世界に知られているのは中村俊輔だけだが、遠藤保仁、長谷部誠、中村憲剛ら、彼に劣らない力の持ち主がそろっている。日本がパスを回し始めたら、どんな強豪でもボールの奪回に苦労するはずだ。しかし世界はその真の力を認識していない。それが日本の大きなアドバンテージだ。
今後積み上げなければならないこともある。だが長所を勝利に結び付けるために最も重要なのはコンディショニングだ。初戦、6月14日のカメルーン戦で、フィジカル、メンタルの両面においていかにいい状態にもっていけるか、それが重要な課題となる。
自らの位置を明確に認識し、相手を恐れずに最大の武器を生かし切る―。日本のワールドカップの戦いは、非常にシンプルだ。
(2009年12月9日)
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