サッカーの話をしよう
No.798 次への戦いが始まる
今夜、ヨーロッパで「次の目標」に向けた戦いが火ぶたを切る。2012年ヨーロッパ選手権(EURO)の予選が始まるのだ。
先陣を切るのはエストニア対フェロー諸島。舞台はエストニアの首都タリンだ。北緯59度。「白夜」の町だけに、キックオフの19時はまだ明るいが...。
タリンは人口41万の美しい町。フィンランド湾に面する港の近くには、世界遺産指定の旧市街が広がっている。試合会場のA・レコック・アリーナは、その旧市街の外れから直線距離でわずか1・5キロに位置する。
収容9300人。強豪クラブFCフローラが所有する、小さいが美しいスタジアムだ。地元のビールメーカー「A・レコック」の援助で2001年に完成、以後エストニア代表のホームになった。
来年の11月まで続く予選。エストニアとフェロー諸島がはいったC組は、イタリア、セルビア、スロベニアと、全6チーム中3チームが「ワールドカップ出場組」で占められている。残りのひとつは北アイルランド。これもワールドカップ出場を惜しいところで逃した強豪だ。
ポーランドとウクライナの共同開催で行われるEURO2012の予選は、出場51チームを9組に分け、各組首位と、2位のなかで最も成績の良い1チームが出場権を獲得し、他の2位8チームが残る4つの座をかけてプレーオフを行う。非常に厳しい戦いだ。
8月に予選が行われるのはタリンでの1試合だけ。他のチームは9月上旬に初戦を戦う。ちょうど1カ月前にワールドカップで優勝したばかりのスペインも、9月3日、リヒテンシュタインとのアウェーゲームで2008年に獲得したタイトルの「防衛戦」をスタートする。
日本では9月と10月の親善試合の予定が発表され、代表新監督の決定も間近になった。次期監督がどんな選手を集めてどんな日本代表をつくっていくのか非常に楽しみだが、同時に、ヨーロッパをはじめとした世界の各地では、すでに「肉を切らせて骨を断つ」ような真剣勝負にはいっていることも意識する必要がある。
9月3日には、ワールドカップで1次リーグ敗退の屈辱を味わったイタリアが、プランデッリ新監督の下、捲土(けんど)重来を期してタリンにやってきて予選初戦を戦う。
「夏から急に冬がくる」と言われるタリン。寒風に震える試合になるかもしれない。
(2010年8月11日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。