サッカーの話をしよう
No.812 Jリーグ終盤、まだまだドラマはある
「激動の一日」を締めくくったのは、千葉MF佐藤勇人の気迫のボレーだった―。
J1とJ2の合計18試合がいっせいに行われた11月20日土曜日。鹿島が神戸と0-0で引き分け、湘南を1-0で下した名古屋のJ1初優勝が決まった。
ストイコビッチ監督が就任して3季目。今季はDF闘莉王など大型補強にも成功、勝負強さを発揮し、1ステージ制になって以来初めて最終節を待たずに優勝を決めた名古屋の強さは本物だった。
だがこの日のハイライトは名古屋の優勝だけではなかった。残留と昇格をかけての争いの激しさも、火花を散らすものだったのだ。
J1とJ2の間では入れ替え戦はなく、J1の下位3チームとJ2の上位3チームが自動的に入れ替わる。そしてそのうち2チームずつはすでに決定している。京都と湘南が降格し、代わって柏と甲府が昇格する。残りはそれぞれ「1枠」だ。
鹿島4連覇の夢を砕いたのはJ1の「降格圏」16位の神戸。見事な闘志と集中力だった。優勝を争っている鹿島に臆(おく)することなく最後まで失わなかった攻撃的姿勢が、「残留圏」15位のF東京との差を勝ち点1に縮める0-0の引き分けにつながった。
F東京の相手は強豪川崎。1-1で迎えた後半39分に川崎に勝ち越し点を許すと、3バックにして前線の人数を増やし、ロスタイムのCKではGK権田まで相手ゴール前に送り込んで同点を狙った。1-2で敗れたが、魂のこもった反撃はファンの心を打った。
J2で現在3位。4季ぶりのJ1を目指す福岡は、この日午後2時半から昇格の望みを残す5位東京Vと対戦。2-0から追いつかれて2-2となったが、ロスタイム3分にFW高橋が30メートルのFKを叩き込んで劇的な勝利をつかんだ。
福岡を勝ち点5差で追う4位千葉は7時半キックオフ。相手はJ2で最下位の北九州だったが、立ち上がりに1点を先制しながらその後消極的になって押し込まれ、後半28分に同点ゴールを喫した。
その後もピンチの連続。起死回生の一撃はロスタイム3分だった。相手のクリアにMF佐藤が猛然とくらいついた。バウンドするボールを左足で力いっぱい叩くと、左ポストの内側に当たってゴールに飛び込んだのだ。
Jリーグ終盤、どのチームも命をかけたような戦いを見せている。残りは2節、計36試合。誰にも予想できないドラマが、まだまだ待っている。
(2010年11月24日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。