サッカーの話をしよう
No.838 アウェーゴール・ルール
キーワードは「アウェーゴール」だ。
来年のロンドン五輪を目指すU-22日本代表は、19日(日)にアジア2次予選の第1戦を豊田スタジアムで戦い、クウェートに3-1で勝った。
ホームアンドアウェーの2戦制で行われている2次予選。23日(木)にクウェートで行われる第2戦で勝つか引き分けなら文句なく3次予選進出が決まる。しかし負けると状況は複雑になる。
負けても1点差なら2戦通算得点は日本のほうが多いから問題はない。3点差だと当然アウトだ。しかし2点差なら? ここで登場するのが「アウェーゴール・ルール」だ。
2試合合計得点が同じになった場合には、アウェーで得た得点が多いチームが勝ちというルール。0-2の負けだと合計得点は3-3だが、アウェーで1点取っているクウェートの勝ち。2-4での負けだと逆に日本の勝ちということになる。
1-3だとややこしい。第2戦は30分間の延長戦となるのだ。今予選の規約では、延長が0-0ならPK戦決着となるが、延長戦のスコアが同点でもゴールが記録されたときには、アウェーゴール・ルールが適用されて日本の勝ちとなる。
アウェーゴール・ルールが日本で使われるようになったのは06年以来。ナビスコ杯とJ1・J2の入れ替え戦で採用され、J1の福岡とJ2の神戸の間での入れ替え戦は神戸で0-0、福岡で1-1と2引き分けだったものの、神戸がJ1復帰を果たしている。
だが制度が生まれたのは1960年代と古い。欧州のクラブカップで採用されたのが始まりだった。当時、アウェーではがちがちに守備を固めて0-0の引き分けに持ち込むという戦術が横行、試合がつまらなくなった。そこでアウェーでも攻める姿勢を出させようと考案されたのだ。
豊田での第1戦、日本は後半16分にカウンターから見事な3点目を決め、安全圏に逃げ込んだかと思った。ところがその6分後に守備の判断ミスが出て絶対に与えたくなかった「アウェーゴール」を与えてしまった。
予報では日中の気温が45度にもなり、夜でも31度までしか下がらないという23日のクウェート。キックオフは現地時間で19時45分(日本時間24日午前1時45分)だが、過酷なコンディションとなるのは間違いない。
ホームで失った1点はけっして軽いものではない。それを帳消しにするには、先制点を狙う積極果敢なサッカーが必要だ。
(2011年6月22日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。