サッカーの話をしよう
No.860 2011年、日本サッカーの奮闘
まさに「日本デー」だった。
11月23日、マレーシアのクアラルンプールで行われたAFCアウォーズ2011。19部門の年間表彰のうち、日本が実に9部門を占めてしまったのだ。
最優秀協会、最優秀フットサルチーム(名古屋オーシャンズ)、最優秀女性コーチ(手塚貴子)、最優秀男性コーチ(佐々木則夫)、最優秀女性主審(山岸佐知子)、最優秀女子代表チーム、最優秀男子代表チーム、最優秀男子ユース選手(石毛秀樹=清水エスパルスユース)、そして最優秀女子選手(宮間あや=岡山湯郷)。
1カ国で年間表彰をここまで独占するのは初めてのことだ。
男子日本代表のアジアカップ制覇(カタール、1月)で始まった2011年。なでしこジャパンが女子ワールドカップで優勝、日本サッカー協会の創立90周年に花を添えた。
男子U-17ワールドカップでベスト8。女子は、オリンピックのアジア予選を筆頭に、U-19、U-16と、アジアを完全制覇した。
ザッケローニ監督率いる日本代表は16戦負けなしの記録をつくり、早々とワールドカップのアジア3次予選突破を決定。関塚隆監督率いるU-22日本代表も、オリンピックのアジア最終予選で3戦全勝とし、「ロンドン」を視野にとらえた。
まだ1カ月を残しているが、11年の日本サッカーは本当によくやった。国際舞台でのこれほど幅広い活躍は初めてのことだ。
日本のサッカーが積み重ねてきた組織づくり、育成と強化の努力が花開いた結果であるのは間違いない。しかし同時に、がんばりを結果につなげることができた背景には、もうひとつ別の理由があったのではないか。
「大震災から3週間もたたないうちに大阪で開催したチャリティーマッチの成功で、日本のサッカー界の気持ちがひとつになった」
AFCの表彰式を前に、日本サッカー協会の小倉純二会長はそんな話をしてくれた。
「600万ドルも出してくれた国際サッカー連盟ほか、世界中から支援の手が差し伸べられた。そうした世界のサッカー仲間の友情に報いようと、選手たちがあらゆる試合で全力を出し尽くしてくれた結果ではないか」
なでしこジャパンが象徴するように、日本選手の活躍は日本中に力を与えた。そして同時に、そのがんばりは、世界からの心のこもった支援に対する日本からの感謝の気持ちを、これ以上ない形で示すものになったのではないだろうか。
(2011年11月30日)
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