サッカーの話をしよう
No.865 J2の年
「J2の年」―。
元日の天皇杯決勝、京都サンガ対FC東京を見ながら思った。
Jリーグ時代になる以前に、日本リーグ2部チームの天皇杯優勝はあった。しかし2部同士の決勝戦は初めて。しかも、東京は昨年のJ2で優勝してことしはでJ1で戦うが、京都は後半の猛追むなしく7位だった。
だが国立競技場4万1974人の大観衆の前で展開されたのは、間違いなく日本のトップクラスと言ってよいサッカーだった。
この試合のパフォーマンスができれば、東京がことしのJ1で上位進出しても不思議はない。そして京都のショートパスをつなぐ独自のスタイルのサッカーは、J1上位(5位)の横浜を下した準決勝に続き、この決勝戦でもたびたび感嘆の声を上げさせた。
1998年に18クラブだったJリーグに一挙に8クラブを加盟させ、99年に1部(J1)16クラブ、2部(J2)10クラブという形でスタートした「2部制」。「水増しでレベル低下」と懸念する声もあった。経営不振のクラブも続出した。
しかし13シーズンの間に内容を充実させつつ徐々にクラブ数を増やし、ことしのJ2はついに「上限」の22クラブで新シーズンを迎える。年末には、史上初の「Jリーグからの降格」が生まれる可能性もある。
シーズン後には、J1昇格をかけた「プレーオフ」も初めて行われる。1、2位は自動昇格だが、3位から6位の4クラブが「最後の1座」を争うのだ。
昨年、J2から昇格して1年目でJ1優勝という快挙を成し遂げた柏レイソルが、J2の充実を象徴している。ことしの東京に同じことができないと誰が言えるだろうか。
4年ぶりにJ1に復帰するコンサドーレ札幌の奮闘も期待される。わずか7年前のクラブ存亡の危機から初昇格を果たしたサガン鳥栖も、「無名軍団」ながら、運動量を生かした激しい攻守でJ1をかき回すだろう。
3月4日に開幕し、11月11日まで続く12年シーズンのJ2。ことしは、全42節のうち31節を日曜日に開催する。原則としてJ1が土曜日、J2が日曜日と、明確に開催日を分けたからだ。土曜日はJ1の9試合、日曜日にはJ2の11試合が全国で繰り広げられ、J2への注目はさらに高まるに違いない。
新時代を迎えたJ2。その充実は過去10年間の日本サッカーの成長を象徴している。
(2012年1月4日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。