サッカーの話をしよう
No.872 計画的なイエローゲットにレッドカード
ウズベキスタン代表5選手に厳しいペナルティーが科せられた。
昨年11月15日のワールドカップアジア3次予選、タジキスタン戦で計画的に警告を受けたとして、国際サッカー連盟(FIFA)の規律委員会が5人に厳罰を下したのだ。
昨年11月、予選の記録を見た瞬間、「やったな」と思った。
ウズベキスタンは日本とともに2試合を残して最終予選進出を決めた。残るタジキスタン戦と日本戦は、いわば「消化試合」。そのタジキスタン戦で2点をリードした後半25分以降に5人の選手が次々と警告を受けた。いずれもそれ以前の試合で1回の警告を受けていた選手である。
3次予選の警告は最終予選までもち越され、累積2回で1試合の出場停止となる。正直なところ、私も日本代表のDF今野泰幸に11月15日の北朝鮮戦で警告が出たらいいなと考えていた。10月のタジキスタン戦で警告を受けていたからだ。しかし今野はそんなことなど知らないようにチームの勝利だけを考えてプレーした。
一方ウズベキスタンはDFムラジャノフ、MFトゥルスノフ、DFトゥフタフヤエフ、MFジェパロフ、FWガリューリンの5人が「カードゲット」に成功。事由がそろって時間の浪費だったことからも、試合の最後の20分間、彼らがUAEのアルザルーニ主審のポケットから黄色いカードを取り出させることに集中したことは明白だ。後半27分に交代ではいったジェパロフなど、まさに警告を受けるための出場だった。
そして後半12分に警告を受けて累積2回になったFWゲインリクを含め6選手が来週の日本戦に出場停止。以後は「きれいな身」となる...はずだった。
試合から2カ月、FIFA規律委員会は審判報告書やビデオ検証などでゲインリク以外の5人を「クロ」と断定した。日本戦だけでなく、最終予選の初戦も出場停止という厳しい処分である。
UEFAチャンピオンズリーグでも、10年の終わりに同様の不正な行為をしたレアル・マドリード(スペイン)の2選手と、それを指示したモウリーニョ監督が処分を受けたことがある。
警告の累積による出場停止はチームにとって頭の痛い問題。だが計画的にイエローカードを出させて出場停止となる試合を調整するという、サッカーと審判をバカにした行為をまかり通らせてはならない。イエローならぬ「レッドカード」を突きつけたFIFAの姿勢を評価したい。
(2012年2月22日)
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