サッカーの話をしよう
No.892 「リオへの道」始まる
ゴール判定装置の正式認可(7月5日)はことしのサッカー界の最大のニュースに違いない。一世紀半のサッカーの歴史のなかで、一部にせよ、初めて判定が機械に委ねられることになったからだ。
一方日本国内の話題は、2週間後に開幕するロンドン五輪の男女サッカーに集まっている。だが私は、試合結果さえ報道されないひとつの大会が気になっている。「U-22アジア選手権」の予選だ。
インドネシア、スマトラ島中央部のプカンバルに6チームを集めて行われている予選E組。日本はマカオに6-0、シンガポールに3-1と連勝でスタートを切った。
生まれたばかり、今回が第1回の大会である。2年ごとに開催され、偶数年に予選、奇数年に16チームによる決勝大会が行われる。より重要なのは、偶数回の大会が五輪予選を兼ねるということだ。
ロンドンまでの4大会、五輪のアジア最終予選は3グループに分けてホームアンドアウェーで行われてきた。しかし次回、16年リオデジャネイロ大会は、15年に行われる第2回U-22アジア選手権がそれにとって代わる。
いま予選が行われている第1回大会の年齢制限は、来年22歳だから91年以降生まれの選手。しかし日本は2歳年下の93年以降生まれ、すなわち「U-19」で出場している。
主力がJリーグで試合に出場している「U-21」年代の代表結成が難しいという事情がある。そこで11月のU-19アジア選手権(兼U-20ワールドカップ予選)への準備を進めていたU-19日本代表(吉田靖監督)を送り出すことにした。
しかし93年以降生まれは、第2回大会、すなわち次回のオリンピック予選の制限年齢でもある。現在のU-19がそのまま「リオ五輪候補」ということになる。ことしの2回にわたるアジア予選、来年のU-20ワールドカップ(トルコ)とU-22アジア選手権...。豊富な国際経験が、リオ五輪、さらにその後のワールドカップで活躍する選手を育てる。
マカオ戦で3点を叩き出したFW鈴木武蔵(新潟)は、ジャマイカ人を父にもつ大型選手。その鈴木が負傷で離脱したが、FW久保裕也(京都)が追加招集され、今後の試合で攻撃を牽引する。
予選は10日の東ティモール戦に続き、12日のインドネシア戦、15日のオーストラリア戦と、強豪との対戦が残る。「ロンドン」目前、早くも「リオ」への道を歩み出した若い世代に注目したい。
(2012年7月11日)
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