サッカーの話をしよう
No.912 世界に通じるストライカーの発掘を
16日に行われたFIFAクラブワールドカップの決勝戦は久々に見応えのある試合だった。欧州勢との決勝戦では近年「守ってカウンター」という形だった南米代表が、互角の攻め合いをした末に勝利をつかんだ。
その決勝点を挙げたのが、コリンチャンス(ブラジル)のペルー人FWゲレロだったことはとても興味深かった。彼は準決勝でも唯一の得点を挙げ、この大会でチームが記録した2得点とも、その頭で叩き出した。
「国際選抜」のチェルシー(イングランド)に対し、コリンチャンスは大半がブラジル人。先発11人のうち実質的に唯一の外国人選手であるゲレロがコリンチャンスに世界チャンピオンの座をもたらしたことになる。
サッカーは得点数を争うゲーム。タイトル獲得には卓越したストライカーが必要だ。しかしトップクラスの試合でコンスタントに得点できるストライカーはどこにもいるというものではない。
欧州の9つのビッグリーグの今季の得点ランキングを見ると、多くのリーグで「外国人ストライカー」がリードしている。上位2人(1カ国だけ1位が3人なので上位3人)計19人の内訳は、リーグのある国の選手が5人と最も多いものの、残りの14人は外国人で、アルゼンチン人とコロンビア人が2人ずついるほか10人は別々の国籍となっている。
すなわちファーストクラスのストライカーは世界を見渡しても1カ国にひとりいるかいないかといった程度なのだ。だから必然的に「外国人」に頼らざるをえない。コリンチャンスも例外ではない。
本物のストライカーは計画的な「育成」というより、むしろ「発見」の対象に属する。何よりもカギになるのは、才能を見つけ出す目なのだ。
Jリーグが始まって20シーズン。今季の佐藤寿人(広島)で「日本人得点王」は6人(2人が2回獲得)となった。今季は得点ランキング上位3人に日本人選手が並び、「日本人ストライカー豊作の年」のように見える。だが日本代表の現状を見れば、20年間の経験でストライカーの才能を見抜く指導者が増えたかというと、まだまだの感が強い。
私は、天才的な「得点本能」をもつ少年は日本にも必ずいると思っている。欧州のトップリーグで得点王になり、所属クラブを世界チャンピオンに導くゴールを決める日本人選手をいつの日にか送り出すためにも、指導者たちの想像力あふれる努力に期待したい。
(2012年12月19日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。