サッカーの話をしよう
No.923 ブラジル・コンフェデ ピンチ?
6月15日に開幕するFIFAコンフェデレーションズカップに暗雲が立ち込めている。スタジアム建設が間に合わないのではないかというのだ。
アジア・チャンピオンとして日本も出場する「コンフェデ」は、来年のワールドカップの予行演習と位置付けられている大会。ワールドカップで使う12会場のうち6スタジアムを使用し、ワールドカップに近い運営形態で開催する。
開幕まで百日を切った先週から、国際サッカー連盟は6会場の視察を行っているが、完成しているのはベロオリゾンテとフォルタレザの2会場だけ。他の4会場は工事が大幅に遅れている。とくに懸念されているのが6月16日のメキシコ対イタリア、20日のスペイン対タヒチ、そして30日の決勝戦の3試合が予定されているリオデジャネイロのマラカナン・スタジアムだ。
63年前のワールドカップの主会場として建設され、ブラジル・サッカーのシンボルとなったマラカナン。当時は収容20万人という世界最大のスタジアムだったが、立ち見席がなくなる改修後は7万6935人収容となる。
当初の完成予定は昨年12月。しかし工事は大幅に遅れ、ピッチもまだできていない。何よりも、完全に新しくなって観客席をすべてカバーする予定の屋根が、4分の1ほどしかできていないのだ。
FIFAは工事の終わったスタジアムの引き渡しを4月27日に設定している。開幕まで50日もあるが、ゴール判定装置(GLT)の設置を含めいろいろなテストをしなければならないからだ。6月2日にはイングランドを迎えてのこけら落としの親善試合が行われる予定になっている。
マラカナンは50年ワールドカップの開幕にも間に合わなかった。当日朝まで観客席の化粧工事がはいっており、スタジアムの周辺は工事現場そのものの雰囲気だったという。ペンキ塗りや後片付けが残っていても試合はできるが、屋根の取り付け工事をしながら観客を入れて試合をすることはできない。
視察に当たっているFIFAのファルク事務総長は、コンフェデ用の6会場だけでなくワールドカップで使用する他の6会場の状況も心配で、「ことし12月に行われる組分け抽せん会前に会場都市を削ることもありうる」とまで語っている。
2010年南アフリカ大会前にもスタジアムの工事の遅れが大きな懸念になった。そのときには全会場が間に合ったが、ブラジルではどうなるのか...。
(2013年3月13日)
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