サッカーの話をしよう
No.927 「ブラジル ランキング19位」の怪
「FIFAランキング」でブラジルが19位に落ちた。
FIFA(国際サッカー連盟)が毎月発表している各国代表チームの世界ランキング。4月11日に出された最新のものでは、スペインがワールドカップで優勝を飾った10年7月以降ほぼ継続している1位の座を守り、その直前まで首位で、以後下降線をたどってきたブラジルが19位まで落ちた。ちなみに日本は29位である。
地元開催のワールドカップを14カ月後に控えるブラジル。英国のブックメーカーによる賭け率では「7対2」で1位だが、6回目の優勝、いや1950年に取り逃がした「地元優勝」を成し遂げるためのチームはまだ姿を現してはいない。
昨年11月にメネゼス監督を解任、後任には02年ワールドカップでブラジルに優勝をもたらしたルイス・スコラリが選ばれたが、ことし2月にはイングランドに1-2で敗れ、3月にはイタリアと2-2で引き分けた。4月6日には「国内組」だけでボリビアと対戦し、4-0の勝利を収めたが、FIFAランキングは3月14日発表の18位からひとつ落ちる結果となった。
ただしこれには少し「裏」がある。
93年に初めて発表されたFIFAランキング。国際試合の成績をポイント化して計算し、順位をつける。細かな説明は省くが、現在の計算方法で大きな違いを生む要素が「試合の重要度」だ。
ワールドカップ予選と地域選手権予選は「2.5」、地域選手権の決勝大会とFIFAコンフェデレーションズカップは「3.0」、そしてワールドカップ決勝大会では「4」を試合結果で得たポイントに掛けるのだが、親善試合ではそれが「1」と、大きく差をつけられているのだ。
ブラジルは11年7月のコパアメリカ(南米選手権)に出場したものの準々決勝で敗退、ポイントを稼ぐことができなかった。そして10年ワールドカップ以後ブラジルがプレーすることができた「掛け率1」以外の試合は、このコパアメリカの4試合だけなのだ。
ワールドカップ開催国だから予選はない。試合は親善試合のみ。勝っても得られるのは予選の半分以下のポイントにすぎない。必然的にランキングは下がる一方となる。
「19位」は、FIFAランキングという制度の欠陥がもたらしたもの。ブラジルの実力を現すものでないことを、6月のコンフェデレーションズカップ開幕戦で当たる日本は肝に銘じる必要がある。
(2013年4月17日)
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