サッカーの話をしよう
No.929 Jリーグ 2ステージ制はありえない
5月15日にJリーグがスタート20年目を迎え、さまざまなイベントが計画されている。20年間でクラブ数が4倍になり、年間800万人を超す観客を集めるJリーグ。課題も多いが、日本の風土になじみ、新しい文化になったのは間違いない。
だがその「お祝いムード」のなかで気になるニュースがあった。「2ステージ制」復活の動きだ。
18クラブがそれぞれの相手とホームとアウェーでいちどずつ戦い、全34節の勝ち点数で優勝を決めている現在のJ1。それを2つのステージに分け、シーズンの最後に2つの優勝クラブの対戦で年間チャンピオンを決しようという制度だ。
過去、93年から04年まで、96年を除く11シーズンで実施された。クラブ数が少なかった95年まではそれぞれのステージで「ホームアンドアウェー」を行ったが、97年以降は「ホームオアアウェー」でステージ優勝を決めた。今後復活するならその形になるだろう。
Jリーグの現在の最大の問題が、リーグ自体への関心の低さであるのは間違いない。それぞれのクラブには独自のファンがいる。各クラブが地域に根差す活動を展開してきた結果だ。だがJリーグ全般に関心をもつ人の数はそう多くはない。その関心を高めるための切り札として、年間3回の優勝が決まる形が考えられたのだろう。
しかし2ステージ制は、まったく「サッカー的」ではない。
それぞれの相手とホームとアウェーで1試合ずつ戦い、その成績(勝ち点)の総和で優勝を争う形は、最も公平で、最も強いチームが優勝できるシステムということができる。2ステージ制は、不公平で、しかも短期決戦にシーズン優勝がかけられる結果、最強チームが運悪く敗れることも頻繁に起こる。
事実、Jリーグで過去11回実施した2ステージ制では、7回にわたって年間通算で最高の成績を残したチームが優勝を逃している。
何よりも悪いのは、「優勝」にばかり関心が集まるあまり、個々のリーグ戦の価値が相対的に低くなってしまうことだ。
発足して20年、各クラブはホームゲームを魅力あるものにするために大きな努力を払ってきた。極端に言えばシーズン17試合のホームゲームのそれぞれが特別な行事、いわば決勝戦のようなもので、そこに価値を見いだすことが「Jリーグ」という文化に違いない。
Jリーグ全体の関心を高める努力は必要だが、2ステージ制以外の道を考えるべきだ。
(2013年5月1日)
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