サッカーの話をしよう

No.932 主審と副審、もっと話を

 Jリーグ第11節、5月11日の浦和×鹿島での誤審事件。原因は主審と副審が話し合わなかったことに尽きる。
 浦和のMF梅崎がシュート性のボールを送り、FW興梠が頭で触れて右隅に決めた。佐藤隆治主審は興梠がオフサイドの位置ではなかったと思った。竹田明弘副審は興梠がオフサイドポジションにいたことはわかっていたが、梅崎のシュートが誰にも触れずにはいったと判断した。
 角度や距離で正しい判定が難しい場合がある。だから主審と副審はひとつのプレーを違う角度から見るべく、位置をとる努力をする。ゴールの判定を下す前に主審と副審が互いの判断を確認し合っていれば、簡単に誤審は避けられた。だが話し合いは行われず、浦和の得点が認められた。
 オフサイドであることを示す映像が大型スクリーンに流れてしまったのは浦和の失態だった。それを見た鹿島の選手たちが佐藤主審に詰め寄るという事態になり、話し合うタイミングを逸したのかもしれない。しかしそれは二次的なことに過ぎない。すべての過ちは、判定を下す前に主審と副審が話し合わなかったことにある。
 難しい判断の場面でも、主審と副審がめったに話さないことに驚く。ほんの数十㍍走って確認し合えば済むのに、主審は自らの判断を信じて疑わず、副審もアピールしない。
 最終的な決断は主審に委ねられるが、「主審(レフェリー)」と「副審(アシスタントレフェリー)」はけっして主従の関係ではない。だが実際には、たとえば経験豊富な主審と若い副審との組み合わせやクラス(国際主審と1級審判)の違いなどで、無意識のうちに互いに上下の感覚があるのではないか。
 翌週の浦和×鳥栖で、浦和FW興梠と鳥栖DF呂成海がからみ、浦和にPKが与えられた。中村太主審は自信をもって呂の反則と判断した。だが呂の足が先にボールを突き、その足に興梠がつまずいたようにも見えた。自信があっても、違う角度から見ていた山際将史副審と話してから判定を下したほうがよかったのではないか。
 判定の正しさは何より大事だ。だが「審判チーム」が全力で正しい判定を下そうと努力していることを示すことにも、小さからぬ意味がある。多少時間はかかるかもしれないが、主審と副審がしっかり話しての結論であれば、選手も納得しやすいのではないか。
 浦和×鹿島の「大事件」の教訓を生かすべきときだったと、私は感じた。

(2013年5月22日) 
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