サッカーの話をしよう
No.944 欧州サッカー放映権料の還流を
きょうから始まる日本代表の国内3連戦。今夜の宮城と9月6日の大阪は完売し、9月10日の横浜も残席はわずか。3試合で約15万人ものファンを集めることになる。日本代表の人気は10年ワールドカップでの好成績を契機に盛り返し、以後衰えることを知らない。
その一方で、Jリーグは本当に地味な存在になってしまった。01年から08年にかけて平均入場者数を伸ばして2万人に手が届くところまできたものの、11年に東日本大震災の影響で1万6000人を割り、昨年は少し持ち直したが、ことしは第20節終了時で1万6000人をわずかに超えるといったところだ。
クラブはそれぞれのホームタウンに根を張り、愛される存在になって地域生活に貢献している。しかしJリーグ全体への関心は驚くほど低い。それがリーグのスポンサー契約獲得の苦戦やテレビ放映権収入の伸び悩みにつながっている。
日本代表人気でもわかるように、サッカーファンは増えている。それがJリーグにつながらない最大の要因は、欧州サッカーの「世界戦略」、日本のサッカーマーケットへの進出にある。日本のファンの使うお金が欧州サッカーに流れ込む一方で、Jリーグにはいっていかないのだ。
スターぞろいでテレビ映像も迫力ある欧州サッカーにファンが魅力を感じるのは自然の流れだ。だがそれによってJリーグが存立の危機に立たされるとしたら看過はできない。
世界全体を見ても、地元のプロリーグが衰退すればその国のサッカーの健全な発展は阻害される。サッカーから生まれる資金の欧州への「一方通行」を止める必要がある。
欧州サッカーのテレビ放映権料の何割かをその国のプロリーグに還流させたらどうか。たとえば日本の放送局が英プレミアリーグに支払う放映権料の2割をJリーグに入れるという形だ。
手始めに、ある国の「サッカーマーケット」がその国のプロリーグに属することを確認しなければならない。
そしてJリーグの主導下、アジアのプロリーグ同士が放映権を交換するなど互いのマーケットを尊重する形をつくり、これを世界的に標準と認めさせるよう働きかける。
欧州サッカーの放映権料で各国のプロリーグが活性化し、魅力を増せば、現在のような欧州とその他の極端なアンバランスは解消に向かうだろう。各国のプロサッカーのマーケットを守ることは、現代のサッカーにとって何より重要な課題だ。
(2013年8月14日)
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