サッカーの話をしよう
No.949 未来につなける『国勢調査』
9月か10月にかけて日本サッカー協会が初めての大がかりな調査を実施する。「サッカーファミリー・カウント2013」。21世紀の日本のサッカー界に大きな影響を与えそうな重要な調査だ。
日本協会の登録選手数は今世紀にはいって微増しながら現在約百万人。Jリーグ以前より4割近く増えている。少子化が進む日本では希有な「成長部門」と言っていい。
だが最近の調査で驚くべきことが判明した。登録選手が毎年2割、すなわち20万人も入れ替わっているのだ。さらに言うと、高校を卒業する年代の選手が登録を継続するのは2割に過ぎず、実に8割の選手が「消えて」いっているという。
そもそも選手登録制度とは「公式大会」を公平に実施するためのもの。大会のためだけに他チームから補強するなどの不正を防ぐことを目的としている。公式大会出場を目指さなくなった選手、あるいは不参加を前提としているチームには、登録費を払うメリットはほとんどない。
Jリーグ誕生のはるか前から、日本のサッカーには「二重構造」が存在していた。
日本サッカー協会は日本のサッカーを統括する唯一の組織。各種の全日本選手権を頂点とした公式大会を主催し運営している。そして傘下の47都道府県協会が、その仕事を分担している。
その一方、全国の市区町村が所有するサッカー場を住民のために運用する組織として、各地の教育委員会の下などに置かれた「市区町村のサッカー協会」が存在する。基本的に日本協会とは無関係の組織。日本協会への選手登録をしなくても、市区町村の協会主催の大会でサッカーを楽しむことが可能なのだ。
今回の「カウント」は、実態把握が難しいフットサル(5人制サッカー)の競技人口、低学年が登録されていない小学生年代の実態調査とともに、市区町村の協会の枠内で活動しているチームの選手数を把握することを主目的としている。
「競技会を目指さなくなっても、引き続きサッカーを楽しんでいる人がたくさんいる。そうした人びとがただ『登録を外れる』のではなく、サッカー界に何らかの『籍』を残す仕組みを考え、サッカーを楽しむ機会をより多様にして、生涯スポーツとしてのサッカーを振興することに今回の調査を生かしたい」(日本サッカー協会)
それは日本のサッカーが成熟に向かう重要なステップになるだろう。実りある調査になることを期待したい。
(2013年9月18日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。