サッカーの話をしよう

No.950 Jリーグ唯一の『商品』の魅力アップが急務

 なんとも奇妙な「改革」ではある。15年からのJリーグ年間チャンピオン決定方式だ。
 1回戦総当たりを2ステージ(2回優勝が決まる)行い、その後に年間チャンピオンを決めるポストシーズントーナメントを計4試合行う。
 奇妙なのは、全国のサポーターたちが「不公平なシステム」と反発するなかで、Jリーグも「ホーム&アウェイで対戦して、年間成績で一番を決めるのがスポーツ上公平」(中西大介Jリーグ競技・事業本部長)と新方式が理想でないことを認めていることだ。
 以前、2ステージ制が04年まで11シーズンにわたって実施された。そのうち実に7シーズンで、実際には年間成績がトップだったチームが優勝を逃している。99年には「年間6位のチャンピオン」まで生まれている。
 ではなぜJリーグは敢えて再び「不公平」を演出しようとしているのか。その背景には、深刻な財政難がある。欧州サッカーに圧倒されて観客数や関心が伸び悩んでいるだけでなく、スポンサー収入が減り、クラブへの配分もJリーグ自体の事業にも支障をきたしかねない事態を迎える恐れがあるという。
 何より懸念されているのが選手育成にかける事業の継続が危ぶまれていることだ。Jリーグはクラブが行っている育成活動を支援し、同時に、13歳以下から1歳きざみのリーグ戦も主催している。未来への投資を減らすことは、自らの未来を閉ざすこと。育成事業は何としても継続しなければならない。
 その資金を確保することが、今回の2ステージ制復活の大きな目的だ。終盤戦のテレビ中継が、近年はほとんど行われていない地上波での放送を含め、高額で販売できそうなのだ。優勝争いが地上波で放映されることで一般の関心も高まり、人気再上昇のきっかけにもなるのではと、Jリーグは期待している。
 ただし今回の改革が「緊急避難」的なものであることは誰にもわかる。収入を確保し、関心が高まったとしても、それは一時的なものにすぎない。危機から脱するには、Jリーグをより魅力あるものにするしかない。
 観戦環境の整備、試合運営の改善、魅力ある選手の育成など、あらゆる面での努力が必要だが、何より重要なのは、選手たち自身が危機感を共有し、魅力あふれる試合をつくり出していくことだ。
 選手こそJリーグの「主役」であり、選手たちがつくり出す試合こそ、Jリーグ唯一の「商品」なのだから。

(2013年9月25日) 
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1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。

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