サッカーの話をしよう
No.959 ワールドカップでもFKスプレー?
来年のワールドカップで「FKスプレー」が使用される?...。
ゴール近くでフリーキック(FK)が与えられたとき、ボールから守備側が離れなければならない距離(9.15メートル)を示すために、主審がピッチにスプレー式のペインターで線を引く道具。12月11日に開幕するFIFAクラブワールドカップ(モロッコ)で使われることになったのだ。
2008年にアルゼンチンで発明され、瞬く間に南米から中米にかけて広まった。ピッチ上に観客席からも見える白い線を引くが、1分もすれば消えてしまうのがミソ。人体に害はなく、芝生を傷めることもない。
FKのとき、主審は攻撃側にボールを置く場所を指示し、それから歩測で9.15メートルのところまで守備側を下げる。ところが、この間に攻撃側がボールを動かしたり、キックの前に守備側がじりじりと(ときに1メートル近く)前進してしまう。
スプレーはそれを妨げるために使われる。ボールの位置を小さくマークし、守備側が出てはいけない2㍍ほどの線を描くのだ。
大きな国際大会で初めて使用されたのは日本が参加する予定だった2011年の南米選手権。サッカーのルールを決める国際サッカー評議会(IFAB)の「実験許可」を受けての試験的使用だった。
その成果を受け、ことし国際サッカー連盟(FIFA)は公式2大会でテストを行った。トルコで開催された20歳以下とUAEでの17歳以下の両世界大会、計104試合だ。
「両大会計44人の主審の大半は、FKスプレーが有用であると報告しています」と説明するのは、FIFAのレフェリー指導部長を務めるM・ブサッカ。
「スプレーには明らかな抑止効果が認められます。違反がなくなり、両大会ではFKのときの距離不足によるイエローカードは1枚もありませんでした」
ただ「距離不足」による警告は最近ではあまり出ないようだ。今季これまでのJ1とJ2計740試合でこの理由での警告はわずか2回。104試合で警告0回は特異なデータとは言えない。
だが「少しでも有利に」と、攻撃側も守備側も小さなごまかしをするのがサッカーという競技の最大の欠点であることは間違いない。そのいらいらをスプレーが減らす効果は大いに期待できる。
クラブワールドカップでの成果を受けて来年3月のIFAB総会で使用が正式認可されれば、6月のワールドカップで使用される可能性も出てくる。
(2013年11月27日)
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