サッカーの話をしよう
No.962 バロンドールの日
きょうは「バロンドール記念日」だ。
57年前、1956年の12月18日に発売されたフランスのサッカー週刊誌「フランス・フットボール」の誌上で最初の「欧州最優秀選手」が発表された。
第一回受賞者はイングランドのFWスタンリー・マシューズ。この年41歳。しかし魔法のようなドリブルと正確なクロスは健在だった。5月にロンドンで行われたブラジルとの親善試合で、彼はイングランドの攻撃をリードし、すべての得点のお膳立てをして4-2の勝利に導いた。
フランス・フットボールの表彰は、1948年に始まったイングランドの最優秀選手表彰にならったもの。ちなみにイングランドの表彰も第1回受賞者はマシューズだった。
フランス・フットボールは欧州16カ国のジャーナリストに投票を依頼、順位をつけて各自5人を選ばせ、その合計ポイントで勝者を選んだ。マシューズは47点。次点はディステファノ(レアル・マドリード、スペイン国籍)。この年に最初の決勝戦が行われた欧州チャンピオンズカップでレアルを優勝に導いたディステファノを、マシューズがわずか3点上回ったのだ。
やがてフランス・フットボールは金色に輝くサッカーボールをかたどったトロフィーを受賞者に贈るようになる。「バロンドール」とは「黄金のボール」を意味する。
長い間、欧州のクラブでプレーする欧州の選手に限定されていたが、40回目の95年に欧州外の国籍をもつ選手にも対象を広げ、07年には欧州のクラブ所属選手限定も解いて世界の選手に広げた。それに伴い投票者も世界中のジャーナリスト(1国1人)となった。
さらに10年には国際サッカー連盟の最優秀選手賞と合併して「FIFAバロンドール」に改組。ジャーナリストだけでなく、各国代表監督と主将も投票に加わるようになった。
ことしの投票は11月末に締め切られ、「5年連続」を目指すメッシ(バルセロナ、アルゼンチン代表)、初受賞に期待がかかるC・ロナウド(レアル・マドリード、ポルトガル代表)、そして「地元」フランスからジダン以来15年ぶりの受賞を目指すリベリ(バイエルン・ミュンヘン)の3人が、最終候補に残っている。
発表と表彰は2014年1月13日(月)。サッカーはあくまでチームゲームだが、ひと握りの天才がそこに夢を与えてきたのも事実。世界の専門家が選ぶ世界最高の選手。ことしは誰になるのか...。
(2013年12月18日)
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