サッカーの話をしよう
No.978 『CKの儀式』撲滅を
レフェリーたちはそれを「儀式」と呼んでいる―。コーナーキック(CK)の前、ゴール前での、守備側と攻撃側の選手の醜い争いと、それによって必要となる主審の仕事だ。
守備側がCKをゾーンで守る場合にはこのようなことは少ないが、マンツーマンで守るチームでは毎回と言っていいほどこうしたいさかいが起こる。
少しでもいいポジションを取ろうとする攻撃側。守備側はマークを外されまいと、手で押さえ、つかみ、相手の動きを妨害する。
ここで「儀式」が始まる。主審が笛を吹いてCKがけられるのを止め、目に余る行為をしているひと組を呼んで「離れなさい」と注意するのだ。だがポジションに戻るとそのふたりは争いを再開し、他の選手たちもつかみ合いをしているうちにCKがけられる...。
シーズン開幕前、Jリーグの村井満チェアマンは「3つの約束」を口にした。そのひとつが「リスタートを早くする」だった。
サッカーの試合時間は90分間ということになっているが、実際にはその3分の1以上、プレーが止まっている状態(ボールが外に出たり笛で止められてからFKなどが行われる間など)がある。実際にプレーが動いている時間を「アクチュアルタイム」と呼び、Jリーグはそれをなんとか60分にしたいと言う。
各チームの努力もあり、J1では第8節までの72試合中25試合で60分間を超えた。第1節のG大阪×浦和は66分18秒もあった。1試合平均57分24秒。昨年1シーズンの平均を1分41秒上回っている。だがその一方で、46分21秒(第6節のFC東京×鳥栖)という試合もあった。
CKについては、ボールが出てからけられるまでの平均時間は第8節までのJ1で31.4秒だった。私がかつて調べたワールドカップの試合では平均20秒を切っていた。まだまだ努力が必要だ。
どのチームもCKのキッカーはあらかじめ決められている。CKになったらすぐに走っていってほしい(ほとんどの選手は歩いていく)。そして何よりもゴール前の見苦しい争いをなくし、「儀式」を不要にしてほしい。
Jリーグでは1試合平均約10本のCKがある。これを20秒平均でければ、1分半以上もアクチュアルタイムが伸びることになる。
CKのたびに繰り返される「儀式」を見ると、つかみ合いなどがあった場合にはそのふたりをCKが終わるまで外に出すなどの罰則も必要ではないかとさえ思えてしまうのだ。
(2014年4月30日)
1993年から東京新聞夕刊で週1回掲載しているサッカーコラムです。試合や選手のことだけではなく、サッカーというものを取り巻く社会や文化など、あらゆる事柄を題材に取り上げています。このサイトでは連載第1回から全ての記事をアーカイブ化して公開しています。最新の記事は水曜日の東京新聞夕刊をご覧ください。