サッカーの話をしよう
No.984 コンビネーション・サッカーの火を消すな
今回のワールドカップの最大の驚きは、大会終盤でのブラジル代表の「崩壊」だった。
準決勝でドイツに1-7という歴史的大敗(ブラジル代表の歴代最多失点)した傷にまるで塩をもみ込まれるように、3位決定戦でもオランダを相手に3失点、一矢を報いることすらできなかった。
「2試合で10失点。恥ずかしい」と、ブラジル人たちは異口同音に強い口調で語った。
もちろん、日本のファンにとっては上位進出の期待がかかりながら1勝もできずにC組4位に終わった日本代表に対する失望のほうが大きかっただろう。「日本のサッカーができれば...」の期待も空しく、良さを発揮できなかっただけでなく、がんばりさえ表現できなかったのだ。
足りなかったもの、すなわち戦う気持ちやフィジカルの強さをどう改善していくか、それが今後の大きな課題に違いない。次期監督の有力候補にメキシコ人が挙げられているのも、そのあたりにひとつの狙いがあるのではないだろうか。
だが次々と失点し満足にシュートまで行けない大会終盤のブラジル代表を見ながら思ったのは、「コンビネーション・サッカーの火を消してはならない」ということだった。
アルゼンチンのメッシ、オランダのロッベンなど、今回のワールドカップでは飛び抜けた個の力に頼って攻撃を切り開こうというチームが多かった。「武器」が明確だから、周囲はその選手を生かすために懸命に戦い、汗を流す。ブラジルの急激な失速はネイマールの負傷離脱で武器を失ったことが大きな原因だった。
だがそれ以上に感じたのは、ネイマールなしでも十分高い技術をもった選手を並べながら、ブラジルにはコンビネーション・プレーがなかったことだ。ひとりがボールを保持する時間が長く、サポートがあってもそこに第3、第4の選手がからんで意外性を創出することなど皆無だった。これでは強いフィジカルと整った守備組織をもつチームに対抗することは難しい。
日本代表のザッケローニ前監督は集団での攻守を組み立てることに心血を注いできた。ワールドカップでチームの状態が上がらず良い結果が出なかったからといって、その仕事を完全否定する必要などない。これまでの日本代表の長所を失ったら、成否は、飛び抜けた個がいるかどうかだけにかかってしまう。
今後も、コンビネーション・サッカーの松明を高く掲げ続けなければならない。
(2014年7月16日)
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