サッカーの話をしよう
No.988 アギーレの時代が始まる
「アギーレ」というのはスペイン北部バスク地方に起源をもつ姓だという。「ギ」にアクセントが置かれ、rが重なる「レ」は「巻き舌」になる。「ハビエル」は日本にキリスト教を伝えた聖フランシスコ・ザビエルにちなみ、やはりバスクの名前だ。
姓名は生粋のバスク人。両親はバスクからの移民だった。「エルバスコ(バスク人)」の愛称もある。だが生まれはメキシコ市。「走り、良いプレーをし、勝つ」という明確なサッカー哲学をもつメキシコの英雄だ。
日本代表監督に就任したハビエル・アギーレ(55)。選任を担当した日本サッカー協会の原博実専務理事兼技術委員長が2010年からラブコールを送り、ようやく今回契約にこぎつけたという。
「ともかく将来性のある選手を選ぶ」
「代表でプレーする以上、国を背負ってプレーする気概をもってほしい。自分のためでなくチームのためにプレーし、勝利に貢献しなければならない」
「守備はDFラインだけでなくチーム全員の仕事。11人で守り、11人で攻めるチームをつくる」
「常に競い合うチームをつくり、選手の競う力を伸ばしたい」
8月11日に都内で行われた就任会見では終始冷静だった。だが実際にはかなり「熱い」人らしい。ふと、昨年からことしのワールドカップにかけてこのような人がいたら、違った歴史があったかもしれないと思った。
前任のザッケローニは、現在の日本人選手の長所を徹底的に生かして非常に良いチームをつくった。ただ、いま考えると、チームが完成した段階で世界を相手にどう戦うか、選手たちには伝わっていなかったように思う。それを明確に伝えられるのが、アギーレのようなパーソナリティーだったのではないか。
アギーレ新監督のチームづくりがどうなるか、それはまだよくわからない。ともかく9月の2試合(5日=対ウルグアイ=札幌、9日=対ベネズエラ=横浜)で方向性を見定めたいと思う。
アギーレ監督はこれからできるだけ多くのJリーグの試合を見たいと語っている。同時に、U―19やリオ五輪チーム(21歳以下)にも注意を払っていくという。監督交代はこれまで選ばれていなかった選手たちにとって大きなチャンス。走って良いプレーを見せ、勝利に貢献すれば、必ず目に止まる。
「アギーレの目」の下、猛暑のなか、それ以上に「熱い」Jリーグが展開される。
(2014年8月13日)
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