サッカーの話をしよう
No.992 インドの新リーグ
日本では「アギーレ・ジャパン」のスタートがサッカーの話題の中心となっているが、インドでは1カ月後に迫ったプロの新リーグ「インド・スーパーリーグ」の開幕に向け期待が高まっている。先週には「FCゴア」の監督にジーコが就任することも発表された。
1947年まで英国の植民地だったことから、第二次世界大戦後のインドはアジアのサッカー強国だった。1960年ローマ五輪ではハンガリーと接戦を演じ、フランスとは1-1で引き分けて「サッカーの未来はアジアに」とまで称賛された。
しかしその後はクリケットの人気に圧倒され、コルカタやゴアなど数都市以外では関心の低い競技となってしまった。現在のFIFAランキングは150位。アジアでも26位と低迷している。
今回のスーパーリーグはアメリカのスポーツマネージメント企業が出資し、インド全国に8つのプロクラブを創設して国民的関心を掘り起こそうというもの。初年度は8クラブが参加し、10月12日に開幕、12月20日にプレーオフ決勝を迎える。
興味深いのは欧州のビッグクラブのいくつかも投資していることだ。たとえばインドサッカーのメッカであるコルカタの「アトレチコ・デ・コルカタ」はスペインのアトレチコ・マドリードがインドの投資家グループらとともに経営に当たる。
どのクラブもひとりは世界的な名声をもつ「看板選手」と契約しなければならないという規約は、マーケティングからの発想だろうか。元イタリア代表MFデルピエロ(39)が「デリー・ダイナモズ」と契約、ベテランのスター選手が続々と参加を表明している。
さらにクラブはその他に7人の外国籍選手とも契約しなければならない。近年アジア各国リーグへの進出が盛んになった日本人選手の活躍も十分期待できる。インド人選手は14人以上。そのうち4人はクラブの地元出身選手である必要がある。
だがこの新リーグの成功を危ぶむ声も低くはない。元インド代表のMFチャタージーは「いまのインドの若者は、イングランドのプレミアリーグなど欧州のサッカーで目が肥えている。それに匹敵するものを見せなければスタジアムには来ないだろう。世界的スターといっても最盛期を過ぎた選手がそれを提供できるとは思えない」と懐疑的だ。
人口12億の超大国インド。新しいアイデアを詰め込んだ新リーグは、この国のサッカー再興の起爆剤となるだろうか。
(2014年9月10日)
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