サッカーの話をしよう

No.1010 世界のスポーツ首都

 アジアカップを追ってオーストラリアの東部を上下している。1月18日にはブリスベンからメルボルンに南下した。
 日本で言えば沖縄と福島といった距離。緯度で10度の違いは大きい。ブリスベンでは気温34度、日向に出ると肌がじりじりと焼ける音が聞こえるようだったが、メルボルンにくると21度。夜8時キックオフの試合は冷え込んだ。
 今大会のメルボルン会場は「レクトアンギュラー・スタジアム」。2010年に完成したばかりのサッカー・ラグビー場だ。収容は3万人と小ぶりだが、「観客第一」の理念を盛り込み、観戦環境は快適そのもの。通常はスポンサーの保険会社名を冠してAAMIパークと呼ばれる。
 メルボルンは世界的な「スポーツ都市」だ。AAMIパークの周囲には巨大スポーツ施設が集まっている。18日にアジアカップ「ウズベキスタン×サウジアラビア」を取材したのだが、周辺はまるで「スポーツの万国博覧会会場」といった様相だった。
 すぐ北には1956年メルボルン五輪の主会場でもあった「メルボルン・クリケットグラウンド」がある。この日はクリケットの国際試合「オーストラリア×インド」が開催され、家族連れでごった返していた。3月には、クリケット・ワールドカップ決勝戦がここで行われる。
 そしてAAMIパークのすぐ西には、錦織圭の出場で日本でも大きな話題になっているテニスの全豪オープン会場「メルボルンパーク」が「ロッドレーバー・アリーナ」を中心に広がっている。開幕は翌日というのに、練習を見るためか、この日すでにたくさんの人が訪れていた。
 驚くべきはこれらの多様なスポーツ施設が一辺800メートルほどの三角形のなかにおさまっていることだ。東京でも国立競技場の近くに神宮球場や秩父宮ラグビー場があって3会場で10万人近くのスポーツファンを集めた日もあった。しかしメルボルンはクリケットグラウンドだけで10万人の収容力があり、国際性では東京など足元にも及ばない。
 しかもこうした巨大スポーツ施設が人口400万という巨大都市の都心から徒歩20分ほどの近さにある。さらに一流スポーツを観戦する近代的なスタジアムだけでなく、一般の人びとが自らスポーツを楽しむための施設も都心に近いところに数多く存在する。世界一流のプレーを見た後、テニスファンは彼らになりきってボールを打つことができるのだ。まさに「世界のスポーツ首都」ではないか。
 比較はしたくない。だがメルボルンを通して東京を見ると、その「スポーツ貧国」ぶりばかりが目立ってしまう。

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(2015年1月21日) 
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

サッカーの話をしようについて

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