サッカーの話をしよう

No.1023 FK前の『演技』にはもう飽きた

 5月10日に行われたJリーグ第11節、1-1の同点で迎えた後半25分に清水のFW大前元紀がゴール前やや左21メートルのフリーキック(FK)を直接決め、低迷する清水に10試合ぶりの勝利をもたらした。
 今季11節までに行われた総試合数は97、記録された得点は240。うちFKを直接決めたものは6点にすぎない。
 2010年ワールドカップ南アフリカ大会のデンマーク戦で、日本は本田圭佑と遠藤保仁の2人がFKを決めてベスト16進出を引き寄せた。だがこのワールドカップで生まれた全145得点のうちFKを直接決めたものは4得点に過ぎなかった。4年後の2014年ブラジル大会では、総得点は171と18%も増えたが、FKは逆に3得点に減った。
 以前は「FKの名手」と呼ばれる選手が何人もいて、FKを直接決めるシーンがしばしば見られた。しかしここ数年間使用されているボールは落ちにくくなったうえにGKの守備能力も上がり、「バニシングスプレー」で守備側の人壁の距離は保たれているがFKを直接決めるシーンはほとんど見られない。
 「俳優じゃないんだぞ」と日本代表にカミナリを落としたのは、1998年から2002年まで監督を務めたフィリップ・トルシエだ。FKの場面で選手同士が話し合う時間が長いのに堪忍袋の緒が切れたのだ。
 現監督のバヒド・ハリルホジッチも、本田圭佑に「早くけるように」と注文をつけたという。そのとおりだ。
 日本代表でもJリーグでもゴール前の直接FKに時間がかかり過ぎる。守備側を下がらせる時間なら仕方がない。しかし主審が笛を吹いてキックを促してからまたボールを置き直すと、それから数歩下がってようやく位置につき、動き始めるというのは、あまりに遅い。テレビ映りを意識しているのかと、トルシエでなくても勘ぐってしまう。
 外国人選手が跋扈(ばっこ)する前のイングランド・リーグでは、FKのトリックが実に多彩だった。ブラジル人のように自在にボールを曲げられる選手がいなかったためだ。Jリーグではチームにひとりは「自信家」がいるから、トリックFKはほとんど見ない。
 1試合に1回や2回は直接狙うことができる距離のFKがある。両チームに1回ずつとしても今季のJリーグ97試合で200回近くのチャンスがあったはずだ。しかし決まったのはわずか6回。素早いFKやトリックFKをもっと使うべきではないか。
 時間をかけても得点率が高いなら待つ価値はあるかもしれない。しかし得点になる可能性が低いものを、もったいぶった「演技」で待たされるのはたまらない。

(2015年5月13日) 
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