サッカーの話をしよう
No.1049 日本代表 成長する力はあるか
日本代表は成長しているだろうか―。
昨夜のカンボジア戦で、日本代表は2015年の活動をすべて終えた。
昨年夏に就任したハビエル・アギーレ監督が契約解除となり、バヒド・ハリルホジッチ監督が就任して9カ月。
就任前に昨年のワールドカップの日本の試合をビデオで分析したハリルホジッチ監督は、相手のゴールによりダイレクトに向かっていく攻撃、よりアグレッシブにボールを奪いに行く守備を求めた。どちらも現在の世界のサッカーのトレンドと言ってよい。
最初の親善試合では、目に見える変化があった。攻撃にスピードが生まれ、アフリカやアジアのトップクラスを相手に3連勝、得点11、失点はわずか1。だがワールドカップ2次予選初戦のシンガポール戦を0-0で引き分け、急激に風向きが変わった。
秋にはいって、予選では着実に勝利を収めたが、ハリルホジッチ監督就任当初の試合にあふれていた意欲や破壊力は影をひそめたままだ。思い切りの良さがなくなって、どこかミスを恐れるプレーばかりになってしまっている。
ハリルホジッチ監督の9カ月間で、日本代表は成長したのか―。
「した」と言い切れないのが残念だ。現在の日本代表からは、試合ごとに、そしてひとつの試合のなかでさえ新しいものが生まれるような躍動感、「成長する力」が伝わってこないのだ。
最近の日本代表でそうした伸びが見られたのは2010年から2011年にかけてだった。DF長友佑都、MF本田圭佑、MF香川真司、DF吉田麻也、FW岡崎慎司らがこの時期に次々と所属の欧州クラブで頭角を現し、日本代表でも主力となった。だが彼らが中心という時代が4年以上経たいまも続いていることこそ、閉塞(へいそく)感の最大の理由だ。
昨年からことしにかけて、2人の代表監督の下で何人もの若手が代表にデビューし、注目を浴びた。しかしその誰もが「中心選手」と呼ばれるほどにはなっていない。
ただ出場試合数を伸ばすだけでは足りない。先輩たちを押しのけ、中心選手となって日本代表を引っ張る存在にならなければならない。
来年、日本代表はワールドカップのアジア最終予選という正念場に臨む。その大事な時期に急成長を見せる選手が何人いるか―。MF山口蛍、FW宇佐美貴史、MF清武弘嗣、FW武藤嘉紀、FW金崎夢生、そしてFW南野拓実、あるいは...。
監督はチームを整備することはできる。だが成長させることはできない。それを可能にするのは、選手自身の「成長する力」以外にない。
(2015年11月18日)
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