サッカーの話をしよう
No.1054 初めての会長選挙
2016年。サッカーにとって大きな岐路の年だ。
昨年来のスキャンダルの嵐のさなか、国際サッカー連盟(FIFA)は2月26日に新会長を選出する選挙を行う。すでにさまざまな改革案が出されているが、新会長の下で根本から改革ができるのか、大事なのは選挙後だ。
日本でも、創立95周年を迎える日本サッカー協会で初の「会長選挙」が行われる。2013年のFIFA総会で傘下の全協会がFIFAの定めた「標準規約」に準拠した規約制定を義務づけられたからだ。
「公益財団法人日本サッカー協会」は、当然、日本の法律に縛られている。それによると「評議員会」によって理事会のメンバーが選ばれ、選ばれた理事たちの互選で代表者(会長)を決める。これまで日本協会会長が新理事会で決められてきたのは法律に沿ったものだった。だが登録チームや選手たちから遠いところで会長が決まっているという印象は否めなかった。
FIFAの標準規約では会長選挙の実施が必須。FIFAとの調整で時間がかかったが、ようやく今回実現した。
昨年12月1日から「立候補の意向者」を受け付け、原博実専務理事と田嶋幸三副会長がその意向を表明した。
しかし必ずしもこの2人だけが候補者になるわけではない。現理事(28人)と評議員(75人)が投票を行い、理事投票で1位になった人と、評議員投票で7票以上を得た人全員が候補者となる。
12月23日に始まったこの投票はきょう1月6日に締め切られ、その後、資格を満たしているか、小倉純二名誉会長を委員長とする「選出管理委員会」が審査、会長候補者となる意向の確認後、1月21日(木)に最終候補者が告示される。最終的な「選挙」は10日後の1月31日(日)に行われる臨時評議員会。過半数を得た者が「会長予定者」となる。この時点で正式決定にならないのは、国内法で新体制の第1回理事会(3月27日)を経る必要があるためだ。
ところで、「評議員って何?」との疑問があるだろう。
日本サッカー協会を構成する単位の代表者と考えればいい。かつては47の都道府県協会から1人ずつ、計47人だった。だが現状に合わせて昨年75人に増やされた。Jリーグを筆頭にした各種連盟やJ1の18クラブからそれぞれ代表者を入れたのだ。すなわち、評議員とは、日本全国のサッカーチームや選手の意思を代表する者ということになる。
「日本代表強化」を柱にすると話す原専務理事か、「育成」の重要性を訴える田嶋副会長か、あるいは...。
この選挙を通じて、日本サッカー協会がより開かれた組織になることを期待したい。もちろん何より大事なのは、FIFAと同様、新会長が当選後に何をするかだが...。
(2016年1月6日)
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