サッカーの話をしよう
No.1055 リオへ、総合力を問われる戦い
アラビア半島東岸の半島国カタール。首都ドーハの1月はとても快適だ。
日中は半袖で過ごすことができるが、日没とともに涼しい風が吹き、ジャケットがないと寒いほどになる。まさに「サッカー向き」の季節だ。
そのドーハで、日本の若い代表チームがリオ五輪出場権をかけた戦いに挑む。U-23アジア選手権。第2回の今回はリオ五輪の予選を兼ね、出場16チーム中上位3チームに出場権が与えられるのだ。
1992年のバルセロナ大会から「23歳以下」となったオリンピックのサッカー。そのアジア最終予選は2000年のシドニー大会以来「ホームアンドアウェー」形式で行われていた。4チームずつ3組に分け、グループ1位にならなければならない形も厳しかったが、ホームでしっかり勝ち点を重ねることにより、苦戦しながらも日本は連続出場を果たしてきた。
だが今回は20年ぶりの集中開催。1次リーグを2位以内で突破し、さらに決勝トーナメントを勝ち上がっていかなければならない。こうした形式の大会で、ここ数年、日本は「準々決勝敗退」を繰り返している。負けた試合の大半は、優勢に試合を進めながら勝ちきれないという内容。一発勝負の厳しさと言える。
いろいろな事情で、今回のU-23は十分なチームづくりの時間を与えられなかった。昨年12月からはかなり集中して遠征や合宿ができたが、FIFAクラブワールドカップや天皇杯、そして海外クラブとの約束などで、全員がそろったのは1月2日に日本を出発する当日のことだった。
しかし現地にはいってからの練習試合で強豪のシリアとベトナムに連勝。課題だった得点力向上の兆しが見える。手倉森誠監督が強調してきた「ダイレクトに相手ゴールを目指すプレー」が浸透し、チームとしてアグレッシブに前へボールを運ぶ意識が共有されるようになった結果だ。
大きな強みは、2年前にオマーンで開催されたこの大会の第1回大会に出場した選手が、23人のなかに12人も含まれていることだ。第2回大会がリオ五輪予選を兼ねることが決まっていたため、第1回大会で日本は制限年齢より2歳下の選手たち、すなわち、今回の制限年齢の選手だけで臨んだ。準々決勝でイラクに0-1で敗れた悔しさを、選手たちは忘れていない。
非常に大きな意味をもつ今晩の初戦の相手は北朝鮮。昨年8月にハリルホジッチ監督率いるA代表が1-2で敗れたときに出場していた選手2人を擁する手ごわい相手だ。
ほぼ3日に1試合、6試合を戦い抜かないとつかめない「リオへの切符」。特定のエースに頼ることはできない。総合力が問われる戦いだ。
(2016年1月13日)
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