サッカーの話をしよう
No.1061 ルールブック大改訂
2月22日に行われた富士ゼロックススーパーカップ。広島の2点目を生んだペナルティーキック(PK)の判定が波紋を呼んだ。
飯田淳平主審はG大阪DF丹羽が相手クロスを手でブロックしたと判断、広島にPKを与えたが、丹羽は「顔に当たった」と主張した。しかし判定は変わらず、FW浅野が決めて2-0となった。その後G大阪が1点を返しただけに、このPKは大きかった。
丹羽は大きく両手を挙げていた。手に当たったように見えたのは仕方がない。副審からは遠いサイドだった。導入を検討中の「追加副審」がいても見えにくい角度だっただろう。しかしVTRを見るとたしかに顔だったようだ。
サッカーのルールを決める唯一の機関「国際サッカー評議会(IFBA)」の年次総会が3月5日にウエールズのカーディフで開催される。議題のひとつに「審判員へのビデオアシスト」という項目があり、注目されている。
だがこの議題はことしすぐに採用されるというものではない。あくまでも将来に向け実験などを進めてよいかを話し合うものだ。今回のIFBA年次総会の最大の注目点は「ルールブックの全面改訂」の承認にある。
サッカーのルールはわずか17条。ルールブックでも55ページ分しかない。しかしより詳しく解説してある「競技規則の解釈と審判員のためのガイドライン」を含めると130ページを超す。それを統合し、重複をなくして、表現を簡略にそして現代的な言葉に改め、全体量を半分ほどにする。さらにはいくつかの点で現状と合わないもの、不明確だった点を明確に規定するという。
この改訂作業にかかわったイングランドのデビッド・エラレイ元審判員がAP通信に語ったところによると、そのなかには実質的な「ルール改正」も含まれているらしい。たとえば従来のルールではキックオフされたボールは「前方に移動」しなければならなかったが、どの方向へでも動けばいいことになる。
オフサイド後の間接FKも大きく変わる。従来の解釈では、味方がボールをプレーした瞬間にオフサイドポジションにいた位置でFKが行われることになっていた。しかし改訂によって受け手が最終的にプレーにかかわった場所からのFKとなるという。すなわち「戻りオフサイド」の場合には、「自陣でのオフサイド」もありうることになる。
用語もレイアウトも大幅に変更し、誰にも理解しやすくすることを意図したという新ルールブック。7月ごろになると思われる日本サッカー協会による日本語版発行が楽しみでならない。
(2016年2月24日)
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