サッカーの話をしよう
No.1062 なでしこ あきらめない力を
必勝を期した初戦のオーストラリア戦で1-3の敗戦。8月のリオ・オリンピックを目指す女子アジア最終予選はなでしこジャパンにとって厳しいスタートとなった。
6チームが参加し、2月29日から大阪で行われている今予選。開幕日の他の2試合では、中国がベトナムをかろうじて2-0で下し、韓国と北朝鮮は1-1の引き分け。早くも「大混戦」の様相だ。
オリンピックの女子サッカーは男子のような年齢制限はない。しかも出場国数が昨年のカナダ大会から24となった女子ワールドカップに対しオリンピックの女子サッカーは半数の12にすぎず、よりハイレベルの大会となる。
当然、アジアに割り当てられた出場枠も少ない。昨年のワールドカップにはアジアから5チームが出場したが、オリンピックにはわずか2チームしか出場できないのだ。
ところがアジアは世界でも有数の「女子サッカー強豪地域」。昨年のワールドカップに出場した5チームのうち、グループリーグを突破できなかったのはタイだけで、韓国がベスト16、中国とオーストラリアがベスト8、日本が準優勝という好成績を残した。
さらに言えば女子のFIFAランキングで現在日本(4位)に次ぐ6位の北朝鮮は、昨年のワールドカップには資格停止で出場できなかった。出ていれば準々決勝あたりまで進む可能性は十分あった。
ちなみに今回の五輪予選の他の出場チームのFIFAランキングは、オーストラリアが9位、中国が17位、韓国が18位、ベトナムが29位。男子(アジアの最高がイランの44位)と比較すればアジアの女子のレベルの高さは明白だ。
そうしたチームが6つ集まってわずか2つの座を争うのが、今回の予選である。総当たりで各チーム5試合を行うが、その初日から接戦になるのは驚くことではない。
それは、初戦を落としたからといって絶望する必要などないということも意味する。2位ラインは勝ち点10(3勝1分け1敗)程度になると予想されるが、それも関係ない。可能性がある限り最後まであきらめずに戦うチームにのみ、出場権はもたらされる。
アジアのレベルの高さはいまに始まったことではなく、なでしこジャパンはこれまでもそうした戦いを勝ち抜いて世界の舞台に立ってきた。優勝した2011年女子ワールドカップのアジア予選(中国・成都)でも、準決勝でオーストラリアに敗れ、最後の1座をかけて中国と3位決定戦を戦い、2-0で勝った。
困難を乗り越えてこそのなでしこジャパン。今晩、第2戦の韓国戦から、魂あふれるチーム一丸のサッカーが続くことを期待したい。
(2016年3月2日)
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